12球団ワーストの得点力でも…漂う上昇気配 西武“夏の反撃”を予感させる痛快1勝
6回のピンチで57球の先発與座→左腕佐藤隼へスイッチ
■西武 5ー3 ロッテ(26日・ベルーナドーム)
松井稼頭央監督就任1年目の西武に、上昇の兆しが見えてきた。16日には最下位から脱出。26日に本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦では、チーム一丸の戦いぶりで、昨季2桁勝利(10勝)の與座海人投手にようやく今季初白星がもたらされた。さらなる上位進出のきっかけとなるかもしれない。
右のサブマリン・與座は、粘り強い投球で5回まで1失点に抑えていたが、2-1とリードして迎えた6回1死二塁のピンチで、3番の山口航輝外野手を迎えた。今月6日の東京ドームでの前回の対戦では、ストレートを左中間席へ放り込まれ煮え湯を飲まされていた。そこで初球に選択したのは、98キロのカーブ。山口がとらえた打球は中堅フェンス手前のアンツーカー部分まで飛んだが、タイミングを外した分、スタンドまで届かず、中堅手の長谷川信哉内野手のグラブに収まった。與座は「前回の反省を生かしながら、丁寧に投げました」と振り返った。
この打球で、二塁走者の友杉篤輝内野手がタッチアップで三塁を陥れ、なおも2死三塁と“一打同点”の場面は続く。打者は左のグレゴリー・ポランコ外野手。ここで松井監督が左腕の佐藤隼輔投手への交代を決断し、ベンチを出た。
與座の投球数は57で、余力は十分あった。6月28日の日本ハム戦(那覇)で7回3安打無失点、今月15日の同カード(ベルーナドーム)でも7回4安打無失点の快投を演じながら、いずれも打線の援護がなく今季未勝利だった経緯がある。ワンヒットで同点となれば、與座の初勝利が消滅するだけに、勇気のいる決断だったはずだが、松井監督は「球数は関係ない。あそこがちょうど替え時だと感じました」と迷わなかった。
俊足の荻野から併殺を2度奪う源田の“神業”
その結果、佐藤隼はポランコに痛烈な打球を浴びたが、二塁手の外崎修汰の正面に飛び二ゴロに。與座の勝利投手の権利をキープしたまま、この回を終えた。その裏の味方の攻撃で、デビッド・マキノン内野手の11号2ランが飛び出し、リードは3点に広がる。7回には3番手の左腕・佐々木健投手が四球と二塁打で1死二、三塁のピンチを招くも、イニング途中からマウンドに上がった4番手・水上由伸投手が後続を1点に抑えた。
8回は平井克典投手、9回は守護神の増田達至投手が、走者を許しながらも耐え忍び、チームとして5-3の勝利にこぎつけた。6投手による継投が功を奏したが、松井監督はもうひとり「昨日、光成が1人で投げ切ってくれたことによって、今日総動員で戦うことができました」と、前日の25日の同カードで9回5安打完封したエース高橋光成投手も殊勲者に加えた。
野手陣は守備でも援護した。特に名手・源田壮亮内野手の遊撃守備はやはり絶品。3回1死一塁では、荻野貴司外野手の詰まった当たりに前進し、捕球後目にも止まらぬ速さで二塁へ送球。こちらもゴールデン・グラブ賞2度の二塁手・外崎が一塁へ転送し、俊足の荻野から併殺を奪った。
2回1死一塁でも平沢大河内野手を遊ゴロ併殺打、7回1死満塁でも荻野を再び遊ゴロ併殺打に仕留めた。いずれも源田は、痛烈な打球を一歩後ずさりしながら巧みにさばき、この試合計3度の“6-4-3”。松井監督も「與座らしく粘り強く投球してくれましたし、守備の方も源田を含め、粘り強く守ってくれたと思います」と称賛を惜しまなかった。
「野手陣の方々がいつも守ってくださいますし、今日はたくさん打ってくださって、勝つことができました」と與座は感激の面持ち。今季は両リーグを通じワーストの247得点(26日現在)と打線が振るわない西武だが、一体感のある守りで上昇モードに入った。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)