“大本命”が長期離脱… 山本由伸vs種市篤暉、奪三振王の栄冠を手にするのは?
7月末時点で防御率&奪三振リーグトップだった佐々木朗希は故障で離脱
7月27日の時点で奪三振数リーグトップに立っていたロッテの佐々木朗希投手が、故障で2か月以上戦列を離れる見通しとなった。7月末の時点で防御率でもリーグトップに立ち、自身初タイトルも視野に入っていた「令和の怪物」の離脱は、非常に惜しまれる。8月2日現在の奪三振ランキングで、佐々木朗に次ぐ2位は114奪三振でオリックスの山本由伸投手で、3位は112奪三振でロッテの種市篤暉投手。わずかに2差だけに、今後激しいタイトル争いが展開されていきそうだ。
今回は、山本と種市のこれまでの球歴や、指標に基づく特徴を紹介。タイトル争いのカギを握る「奪三振率」に加えて、2023年における両投手の全ての登板データを振り返ることによって、ハイレベルな争いが期待される今後の展開にも期待をかけたい。(成績は8月1日時点)
山本は2016年のドラフト4位でオリックスに入団。先発再転向した2019年に防御率1.95で最優秀防御率を受賞し、続く2020年は149奪三振で最多奪三振に輝いた。2021年は18勝5敗、防御率1.39、206奪三振で最多勝・最高勝率・最多奪三振・最優秀防御率の投手4冠に輝き、リーグMVPと沢村賞も受賞。2022年も2年連続投手4冠を達成。リーグMVPと沢村賞も2年連続で獲得し、オリックスのリーグ連覇の立役者の一人となった。
2023年もここまでリーグトップの10勝を挙げ、最多奪三振と最優秀防御率も射程圏内に捉えている。今季も抜群の投球内容を示しているだけに、3年連続の投手4冠という球史に残る快挙が達成される可能性も大いにありそうだ。
種市は2016年のドラフト6位でロッテに入団。プロ2年目の2018年は7試合に先発して防御率6.10と苦しんだが、翌2019年はリリーフとして開幕1軍を勝ち取って2ホールドを記録。4月29日以降は先発に回ると、116回2/3イニングで135個の三振を奪い、23イニング連続奪三振を記録するなど、奪三振力の高い本格派右腕として台頭した。
2020年は7月終了時点で防御率2.20と絶好調だったが、8月1日の試合を最後に、右肘の故障で長期離脱を余儀なくされた。その後はトミー・ジョン手術と長いリハビリを経て、2022年におよそ2年ぶりとなる1軍登板を果たした。2023年は開幕から先発として活躍し、7月終了時点で7勝をマーク。最大の特徴だった奪三振も故障前を上回るペースで積み上げ、自身初のオールスターにも選出された。
投球回は12イニング差…種市はどれだけ伸ばせるかがカギ握るか
山本は2019年までの奪三振率は3年続けて7点台と高くはなかったが、キャリアベストの奪三振率10.59を記録した2020年以降は傾向が変化。2023年も含めて4シーズン連続で投球回を上回る奪三振を記録している。与四球率も2021年以降は3年連続で1点台と、四球から崩れるケースも非常に少ない。制球力を示す指標の「K/BB」は一般的に3.50を上回れば優秀とされるが、2019年から5年連続でその水準を上回る。2023年はここまで15試合に登板して与四球14と、1試合平均1個未満。与四球率も1.17と過去最高の数字で、K/BBは8.14という驚異的な水準に達している。
種市の最大の持ち味は、非常に高い奪三振率だ。故障に苦しむシーズンも多かったが、8試合以上に登板した2019年と2023年の奪三振率はともに10点台以上。通算の奪三振率も9.75と、奪三振数が投球回を上回っている。2023年の奪三振率は11.33と、佐々木朗の数字(13.76)には及ばないものの、7月終了時点で規定投球回に到達している投手の中では最も高い。同ランキング2位で西武の平良海馬投手の数字が9.60であることを考えれば、頭一つ抜けている。
また2023年の与四球率は3.03と、キャリア平均の数字(3.46)を上回っている。今季の「K/BB」も3.73と優秀な水準に到達している点からも、奪三振の多さだけではなく、投手としての総合的な能力についても着実に成長を遂げていることがわかる。
投球回を見てみると、山本は今季登板した15試合すべてで6回以上を投げ、うち14試合で6奪三振以上。14試合でクオリティスタートなど、奪三振と投球内容の両面において、群を抜く安定感を見せている。また、15試合中11試合で投球回以上の奪三振を記録し、6月13日阪神戦(8回11奪三振)、7月8日西武戦(9回13奪三振)と、2桁三振が2度ある。コンスタントに長いイニングを投げられる安定感は、奪三振を積み重ねるという観点においても大きな要素。それに加えて、多くの試合でイニング数と同じだけの奪三振を記録できる点が、3度の奪三振王に輝いた山本の、タイトル争いにおける強みとなっている。
種市の今シーズンは、4イニングで被安打4、与四球3ながら1失点に抑え、12個のアウトのうち10個を三振で記録する“怪投”でスタート。その後も高い奪三振力を発揮しており、今季15試合のうち、実に14試合で投球回以上の奪三振を記録している。一方で、現時点での投球イニングは89回と、山本の101回とは12イニングもの差がある。4月23日以降はすべての試合で5回以上を投げている点はプラスだが、8回以上を投げぬいた試合は9回9奪三振だった5月16日のオリックス戦のみ。奪三振の“効率”という面では山本をも上回っていることもあり、今後はどれだけ投球回を伸ばせるかがタイトル獲得のカギを握る。
今や球界を代表するエースとなった剛腕が、3年連続の投手4冠という大偉業を達成するのか。それとも、無念の離脱を強いられた佐々木朗のチームメートが、自身初のタイトルを手にするのか。ともに1998年生まれの24歳、2人の若き右腕が演じるタイトル争いは、今後も目が離せない展開になることだろう。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)