松井監督も激賞「持っている」 激しい“生存競争”がもたらした伏兵の劇的アーチ
長谷川が両足をつり交代→8回の守備から出場
■西武 3ー2 オリックス(4日・ベルーナドーム)
パ・リーグ5位の西武は4日のオリックス戦(ベルーナドーム)で、1-1で迎えた9回に途中出場の岸潤一郎外野手が劇的なサヨナラ3号ソロを放ち、3連勝を飾って4位の楽天に1ゲーム差に迫った。プロ4年目・26歳の岸はこの日、スタメンで2安打していた長谷川信哉内野手が両足をつりベンチへ退いたことを受け、8回から右翼の守備に就いていた。激しい外野のポジション争いがもたらした一発と言えそうだ。
9回1死走者なし。岸はカウント1-2と追い込まれながら、オリックス5番手・阿部翔太投手のスプリットをすくい上げた。打球は左中間フェンスをギリギリ越え、最前列付近で大きく跳ねた。
人生初のサヨナラホームラン。「打った瞬間、頭が真っ白でした。何を打ったかも覚えていない。とりあえず、三塁打にしようと思って全力で走りました。声援や、球場の雰囲気で(本塁打と)わかりました」と興奮がなかなか冷めない。ホームベース付近でチームメートたちから歓喜のウォーターシャワーを浴びせられ、「気持ちよかったですが、炭酸水がまじっていて、めちゃくちゃ目が痛かったです」と満面に笑みをたたえた。
今季は開幕1軍を逃し、1軍初昇格も6月14日まで待たされた。しかも、若林楽人外野手が特例2023の対象選手として急きょ抹消されたことを受けて、2軍の試合会場の埼玉・浦和から、1軍の試合のある東京ドームへ呼び寄せられるというあわただしさだった。その後、強肩を生かした外野守備で、相手のランニングホームランを阻止したり、“ライトゴロ”に仕留めたりと存在感を放った一方、打撃の調子は上がらず(打率.209=4日現在)、ここ4試合スタメンから外れていた。
そんな中、長谷川の足がつり、急きょ巡ってきた出場機会。「試合に出る準備はしていました。これだけ暑いので、(スタメンで出ている選手は)大変だと思う。みんなでバックアップして、チームが1つになって勝っていければと思います」とうなずいた。
長女の誕生日前日に…父がバットで“前祝い”
松井稼頭央監督は「途中から出て、ああいうところで打てる岸は“持っている”。(チーム内で)いい競争意識を持ってやってくれているのかなと思います」と評した。2軍監督時代から岸を指導してきたとあって、「今季はファームで反対方向へ打つことに取り組んで、1軍に上がってきた時は状態が良かった」と指摘し、「今も打撃コーチと一緒に(打撃向上に)取り組んでいるところなので、こうして早々と結果が出るとなれば、本人も自信がつくでしょう」と目を細めた。
西武の外野陣は、2軍での調整が長くなっていた来日1年目のマーク・ペイトン外野手が7月下旬に昇格し、ここにきて1番打者として本領を発揮しはじめた。21歳で成長著しい長谷川、3番でのスタメン出場が増えている鈴木将平外野手、ドラフト1位ルーキーの蛭間拓哉外野手に、今月1日に2軍に降格した愛斗外野手らを含め、“生存競争”が激烈だ。
岸の長女は5日が誕生日だそうで、絶好の前日祝いとなった。前日だけで終わらず、誕生日当日も祝いたいところ。「それにはまず、試合に出ることが第1の目標。しっかり準備して臨みます」と気合を入れ直した。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)