亡きコーチへ感謝「先生のような人に」 “最弱”と言われた浦和学院、天国へ届けた18安打
敗れた森大監督「やはり初回でエラーもあり、流れが向こうに行ってしまった」
第105回全国高校野球選手権記念大会が6日に開幕し、第3試合は浦和学院(埼玉)が壮絶な打撃戦の末、9-19で昨年の優勝校・仙台育英(宮城)に敗れた。7月に亡くなった同校OBでコーチを務めた三浦貴さんへ白星は届けられなかったが、主将の江口英寿外野手(3年)は「三浦先生のおかけでここまで来られました。明るく伝えたい」と、笑顔で感謝の言葉を送った。
昨年の王者を相手に怯むことはなかった。3回終了時点で9点ビハインドとなったが、諦めなかった。4回に4番・西田瞬内野手(1年)、三井雄心内野手(2年)の連続適時打などで4点を返すと、11点差をつけられた7回には6安打を集中させて一挙5得点。敗れはしたが、仙台育英が誇る湯田、高橋、仁田の“150キロトリオ”から18安打を放ち球場を沸かせた。
大会初日の第3試合。ナイターゲームのなかで死闘を演じた森大監督は「やはり初回でエラーもあり、流れが向こうに行ってしまった。埼玉大会でできた守備からリズムをっていうのが、できなかったのが全ての敗因」と悔しさをにじませた。
それでも、強力投手陣を相手に打撃では互角以上の戦いを見せた。昨秋の新チームの段階では「史上最弱世代」と厳しい言葉をかけることもあったという。1年を通したナインの成長ぶりを認め「本当に3年生中心に私をここに連れてきてくれて感謝しかないです」と賛辞を送った。
悲しみを乗り越えて辿り着いた聖地だった。埼玉大会中に巨人、西武でプレーしたOBの三浦コーチが、病気のため45歳の若さでこの世を去った。甲子園で勝利を届けることはできなかったが「最後まで試合を見届けてくれたと思います。校歌を聞かせてあげることはできなかったが『まだ、まだだな。もう1回頑張ろう』と言ってると思う」と、亡き先輩への思いを口にした。
“最弱世代”と言われ続けたチームをまとめた主将の江口は、涙はなく晴れ晴れとした表情を見せていた。亡くなる直前まで指導してくれた三浦コーチ。この日は6失策と守備の乱れが響いただけに「エラーもあったので、ちょっと怒ってるんじゃないかな」と苦笑いした。
野球のプレー以外にも私生活の面で指導を受け、常に選手目線で話しをしてくれた。これまで一緒に過ごした日々を振り返り「最弱世代と言われていたが『お前らなら絶対に甲子園にいける』と言ってくれた。先生(三浦コーチ)のような人になりたい。先生のおかけでここまで来れましたと伝えたい」と、最後まで笑顔で感謝の言葉を口にしていた。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)