弟が兄へ「しっかりしろ!」 鳥栖工に初勝利もたらした“仮面ライダーバッテリー”

鳥栖工が延長12回で富山商にサヨナラ勝ちした
鳥栖工が延長12回で富山商にサヨナラ勝ちした

弟・松延響は1年ながら最速144キロ…7イニングを5安打1失点

 第105回全国高等学校野球選手権記念大会が9日、阪神甲子園球場で行われ、大会4日目第1試合は春夏通じて初出場の鳥栖工(佐賀)が延長12回3-2で富山商(富山)にサヨナラ勝ちした。松延晶音(あぎと)捕手(3年)と弟・響(ひびき)投手(1年)の“仮面ライダー兄弟バッテリー”が、同校を甲子園初勝利に導いた。

 1年生右腕が衝撃の甲子園デビューを飾った。弟の響は6回から登板すると自己最速を2キロ更新する144キロの直球、カーブ、スライダーを武器にスコアボードに「0」を並べた。タイブレークに入った延長11回に1点は失ったものの計7イニングを5安打1失点(自責0)、防御率0.00と完璧な投球内容だった。

 登板当初は緊張とマウンドの傾斜が合わず制球を乱す場面もあったが「体が沈まないようにリリースポイントを修正したり、カーブなどで体の開きを抑えてストレートを投げました」。マウンド上で冷静に自己分析。6回は兄・晶音が二盗を阻止し「ずっとランナーはお兄ちゃんに任せているので、自分は打者に集中できる。さすが」と感謝を口にした。

 仲良し兄弟も試合になれば関係ない。延長11回1死一、三塁の場面では兄・晶音が135キロの直球を捕逸し1点を献上。弟・響は「前から暴投だったりやっていたので、気が抜けていたのかなと。しっかりしろ!」と檄を飛ばしたという。メンタル面でも1年生とは思えない度胸を見せていた。

「投げたいボールを分かっている」弟が兄に寄せる絶大な信頼

 兄弟の名前はアギトとヒビキ。特撮テレビドラマ「仮面ライダー」シリーズに登場するキャラクターと同じで、佐賀大会から“仮面ライダー兄弟”として注目を集めていた。「名前の由来が仮面ライダーと聞いてるので。お父さんからもちょうど良かったやんと。自分が活躍できればいいかなと」と響が言うと、晶音も「昔は嫌だったけど、今は注目されて有難い。嬉しいです」と笑顔を見せる。

 佐賀大会中はユニホームを洗っている時も、風呂で一緒になった時も配球面について語り合った。「4番・捕手」を務める兄を、弟は「自分のこと良く知っているので、投げたいボールを分かっている。そこを要求してくれる。兄弟ならではです」と、誇りに感じている。

 春夏通じて初出場の甲子園で兄弟バッテリーが躍動し、鳥栖工校の歴史を変えた。大坪慎一監督も「今日は彼(響)に尽きますね。兄弟だからできたんじゃないかと思います」とニンマリ。仮面ライダーにも負けない“2人のヒーロー”が次戦もチームを牽引していく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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