「打てると思わなくていい」 巨人ドラ1初安打の裏で…坂本勇人が託した“金言”
原監督称賛「“1”という数字が出たのは非常に大きい」
■DeNA 4ー2 巨人(11日・東京ドーム)
巨人のドラフト1位ルーキー・浅野翔吾外野手は11日、本拠地・東京ドームで行われたDeNA戦に「8番・右翼」でプロ入り初めてスタメンに名を連ねた。5回の第2打席で左安打を放ち、プロ5打席目にしてプロ初安打をマーク。7月に1軍初昇格した際は結果を残せず、ファームへ送り返されたが、この日に再昇格。今度こそ1軍に定着し、期待通りスターへの階段を上り始めることができるだろうか。
0-0で迎えた5回1死一塁。右打席に立った浅野はカウント0-1から、DeNA先発・東克樹投手が投じた内角低めの145キロ速球を迷わず振り抜いた。詰まってバットが折れ、鈍い音がしたが打球はショートとレフトの間に落ちた。「高校時代から、詰まっても右手で押し込む打撃に自信がありました。スタンドのいろんな場所から『ショーゴ!』という声が聞こえて、うれしかったです」と破顔一笑。原辰徳監督もドラフト1位の初安打に「元気がいいし、“1”という数字が出たのは非常に大きいことではないでしょうか」と口元が綻んだ。
7月の1軍初昇格では14日間出場選手登録されたものの、3試合に出場し3打数ノーヒットで2軍へ逆戻り。それでもイースタン・リーグで主に1番として出場し、最近10試合で38打数15安打(打率.395)の猛打を振るい、再昇格を勝ち取った。2軍では、右太もも裏を痛めて7月27日までリハビリに取り組んでいた坂本勇人内野手、4月14日以降2軍調整が続いている松田宣浩内野手らからアドバイスを受けた。「1軍で活躍されているベテランの方々からたくさん教えてもらいながら実践したことが、いい結果につながったと思います」と感謝する。
坂本には「打撃フォームに関してもいろいろ教えていただきましたが、それ以上に、打席での考え方について『打てると思わなくていい。もっと楽に行けよ』と言ってもらえました。お陰で、たとえ三振しても、何がいけなかったのかを冷静かつポジティブに考えられるようになりました」と明かす。
「良かったことも悪かったことも全部」タブレットに打ち込む日々
一方で「マッチさん(松田)は普段から、僕よりも僕の(試合での打撃の)動画を見てくださっているのではないかというレベル。次の日に会った時に、『ショーゴ、昨日のあれ、良かったな』とか、良いことも悪いことも言ってくださいます」。現役最多の通算2281安打(11日現在)を誇る34歳の坂本、通算1832安打で40歳の松田をはじめ、チームぐるみで18歳の高卒ルーキーの成長を見守っているムードがうかがえる。
実際、1軍の壁に跳ね返された経験は糧になっているようで「引っ掛ける癖があったので、打撃練習ではできるだけ右方向を意識するようにしています」と話す。この日のプロ初ヒットについても「前回1軍にいた頃のスイングなら、あのインハイのボールには詰まってサードゴロになっていたと思います。バットの出し方がわかってきたので、ゴロにならずショートの後ろに落ちました」と自ら成長を実感している。
1年前、夏の甲子園の3試合で通算打率.700(10打数7安打)、3本塁打6打点をマークし、香川・高松商高をベスト8に導いた浅野。それでも「まさか1年後に自分が1軍の試合に出ているとは、思ってもいなかった。うれしいと言うか、いろんな方のおかげで成長できているのだなと思います」と謙虚だ。
現状は「自分の野球に使うタブレットがあって、先輩に教わったことも、良かったことも悪かったことも、全部打ち込んでいます」と日々勉強。もはや肉筆のノートが数十冊、数百冊とたまっていく時代ではないようだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)