巨人から突然のトレード通告「芯の部分では難しい」 石川慎吾が新天地で輝けるワケ
ロッテで印象的な活躍を見せる石川慎吾…巨人では「力がなかっただけ」
今季途中に巨人からロッテに移籍し、快打を連発している石川慎吾外野手は2度のトレードを経験している。今季巨人では2軍で打率.358を残しながら1軍昇格がなく、7月3日にロッテへの移籍が発表された。移籍後は代打や左投手相手のスタメンを中心に出番をつかみ、4割を超える打率を残す。この間、どんな変化があったのだろうか。
「巨人の時も『チャンスをもらえなかった』とか言ってくれる人はいます。でも結局は、僕に力がなくて出られなかっただけのこと。そこに対する悔しさはありますよ」
石川慎のプロ野球人生は日本ハムで始まった。ドラフト3位で指名され2012年に入団。3年目になると対左投手要員として、少しずつ1軍の出番が増えていった。ただ2016年のオフに、大田泰示外野手、公文克彦投手との交換で、吉川光夫投手と共に巨人へ移った。
「当時は若かったこともあるでしょうけど、単純に寂しかったですね。ファイターズの仲間との別れが。『巨人に選んでもらったんだ』といろんな人に言われましたけど、それより寂しい気持ちの方が強かった」
今回のトレードはまた、受け止め方が違ったという。
「1回目のトレードはオフだったじゃないですか。今回はシーズン中です。それまでどうにかジャイアンツの力になれることはないかと思っていたのが、明日からはロッテのために頑張ってほしいと。やっぱり芯の部分では、なかなか切り替えるのは難しいですよね」
そこで力になったのが、「やっぱり僕を知ってくれているのが大きいですね」というロッテの体制だった。吉井理人監督、金子誠コーチとは日本ハムでも一緒だった。「(金子)誠さんと『日本ハム時代の僕とは違いますよ』とか話しましたね。日本ハム時代の僕は若くてもっとオラオラしていたし、調子に乗っていたので」と笑う。
移籍をきっかけに…「必要と言われるのは嬉しい。ウィンウィンの結果にしないと」
また吉井監督は「野球に関係ないことを話してくれる」のが大きいという。「他球団がそうじゃないというわけではないですよ」と前置きした上で「昨日晩飯何食ったん? とか、監督に言われるだけで、選手は嬉しいものなんです。選手の方から言うわけにはいかないじゃないですか。そういう繰り返しで、この監督のために頑張りたいと思うんです」。
そして今ロッテで力を発揮できているのは、プロ13年目の「すべての経験がここにつながっている」からだ。
「巨人では2軍監督の二岡(智宏)さんや橋本(到)コーチの存在が大きかったですね。正直、心が折れそうになった時もあります。そこで一緒に話して受け止めてくれたり、まだまだ歯を食いしばってやらないとダメだと思わせてくれました。周りがどうなっても、自分は変わらず、やるべきことをしっかりやるしかないと思わせてくれたんです」
昨オフに現役ドラフトがあったこともあり、今季ほど「移籍」が注目されたシーズンもない。石川慎は2度の経験を踏まえた上で、移籍は「選手とすれば必要と言われるのは嬉しいですし、期待に応えたいという気持ちも出る。良いことだとは思います」と口にする。
「今いるチームでポジションが埋まっていても、他のチームなら空いていることがある。そのために編成、スカウトの皆さんも密に連絡を取り合って、シミュレーションしてくださっているんですし、ウィンウィンの結果にしなければいけないと思います」
12年目で浮上のきっかけは得た。ただこのまま行くとも思っていない。「10月まで4割、5割打っていたら『どうしたん? 俺?』と思うでしょうけど、10年もやっていればそんなに甘くないことはわかります。どんな結果になっても、最後まで全力でやり切ることは約束できます」。日本ハム時代から変わらないその姿勢もまた、新天地にフィットできた大きな理由だろう。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)