台風接近の甲子園「今日で勝負をつけたかった」 北海監督も悩んだ“新ルール”
サヨナラ劇勝の北海・平川監督が継続試合を避けたかった理由とは
第105回全国高校野球選手権は14日、阪神甲子園球場で大会第9日を行い、第3試合では北海(南北海道)が浜松開誠館(静岡)を3-2のサヨナラで下して3回戦進出を決めた。15日の全試合順延が早々に発表されるなど、台風7号が接近する中で行われた試合。平川敦監督は「今日で勝負をつけたかった」と、まだ甲子園では適用されたことのないルールまで頭に入れながらの戦いだったと明かす。
ここ数年、高校野球のルールには毎年のように変更が加えられている。2022年からは「継続試合」が適用されるようになった。天候の悪化などで試合進行が不可能になった場合、ノーゲームやコールドゲームにするのではなく中断時の状況を引き継いで、後日試合を再開するものだ。まだ甲子園で適用されたことはないが、各地方大会では実施されている。
13日の第3試合、花巻東(岩手)とクラーク国際(北北海道)の試合では2度にわたる降雨で試合が1時間半中断。さらに台風が接近しているこの日は、同じように中断となれば継続試合となる可能性まで頭に入れておかなければならなかった。
平川監督は「継続試合はゲームが変わってしまう。9回で試合を決めたかったけど、ダメでも継続試合だけは避けたかった。今日で勝負をつけたかった」と、このルールへの適応の難しさを漏らす。緊張感のある流れを勝利に結びつけたかったのが本音だ。
各地で語られるタイブレークの難しさ「9回までがなかったことになる」
さらに、今年は延長10回から即、試合進行を促進するタイブレークに突入することになった。今夏の各地方大会で、各地の実力校が早々に敗れるケースが続いたのは、このルールが影響しているのではないかという声も多い。
平川監督も「タイブレークは9回までの試合がなかったことになるというか……。流れが全く別のものになる」と、試合の空気が全く変わってしまうことを恐れていた。それほどまでに細心の注意を払い、進めていった試合だった。
勝利への執念が、采配からあふれていた。先発した最速147キロ右腕の岡田彗斗(3年)をはじめ、左腕の長内陽大(3年)、強打も光る熊谷陽輝(3年)と3人の投手を起用。それぞれ降板しても別のポジションを守らせて試合に残し、3人とも2度目のマウンドに送り出した。しっかりスイングしてくる浜松開誠館打線の目先を変えながら、機を待った。
2-2の同点の9回、先頭の熊谷が左前打で出塁。「4番・二塁」の今北孝晟内野手(3年)が犠打で送って1死二塁とすると、「5番・三塁」の関辰之助内野手(3年)が左中間へサヨナラ打を放った。「苦しい試合で、9回は祈るだけでした。打順の巡りが良くて、何とか3番の熊谷が出て4、5番で返せないかと。その通りになりましたね」。穏やかな表情で、“タイムリミット”までに試合を決めたナインを称えていた。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)