8月は防御率19点台も…エ軍ドラ1を“強行登板” 好投もたらした指揮官の親心
8回1死までノーノーで今季3勝目を挙げたデトマーズ
■エンゼルス 2ー0 レンジャーズ(日本時間17日・アーリントン)
未だ1試合だが、少し苦しみから解放されたようにも思えた。エンゼルスのリード・デトマーズ投手は16日(日本時間17日)、敵地・レンジャーズ戦で今季3勝目を挙げた。8回1死でセミエンに二塁打を許すまで、ノーヒットの好投。前回登板で3回途中7失点でKOされた左腕は「ホッと一息つける」と安堵の表情を浮かべた。
普段と変わらず小さい声量とポーカーフェイスだったが、時折表情が崩れた。「(取り組んだ)全てのことが1つになったように感じた。ようやくだ。気分がいい」。報道陣に囲まれるデトマーズの後ろでは仲の良いサンドバルが変顔をして、笑いを誘っていた。苦しんだ左腕の復活をチームメート、監督の皆が喜んでいた。
この日、初回に大谷翔平投手の42号ソロで先制点をもらうと、その裏にシーガーを四球で歩かせたが、無安打投球を続けた。5回には3者連続三振の好投も。8回1死でセミエンに二塁打を打たれたところでマウンドを降りた。
2020年にドラフト1巡目(全体10位)でエンゼルス入りした左腕。昨季はノーヒットノーランを達成するなど、順調に進んでいるかのように思えたが、今年は開幕から5連敗含む10戦勝ち星なしと躓いた。その後も、2勝を挙げたが、再び4連敗。前回登板の敵地アストロズ戦では、2回1/3を7失点で、8月は防御率19.89と打ち込まれた。
ネビン監督は不調でも中4日で起用…最後まで「投げさせるつもりだった」
それでも、フィル・ネビン監督はデトマーズを中4日で地区首位レンジャーズ相手に強行登板させた。「全ての選手から三振を取ろうとしないように」と言い続け、「エンゼルスの将来を担う存在」と信じて送り出した。その結果が、3勝目につながった。
中4日で108球の快投。5回終了時からブルペンの準備はできていたが、安打を許すまで交代させなかった。ネビン監督は「今となっては言わない方がいいけど、(たとえ125球を超えても)投げさせるつもりだった」と振り返る。「誇りに思っている。色んなことを経験した」。まるで自らの息子を見ているかのように嬉しそうだ。
デトマーズもそんな指揮官の期待に感謝する。「ネブ(ネビン監督)は信じられない男だ。信用してくれる。投げさせ続けてくれたことに対して、リスペクトを感じた」。自分はできると言い聞かせてマウンドに上がった。
惜しくも後5人で逃した2度目の快挙。「6回から意識していたよ。2回達成できたらクールだけど、軌道修正できてよかった」と笑う。今オフFAになる大谷の去就は不透明。エンゼルスの将来に、左腕の活躍は不可欠だ。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)