変化球でバットを真っ二つ MLBスカウトも熱視線…山本由伸の“一味違う”ギアチェンジ
7回の千載一遇チャンスに代打攻勢も…西武・松井監督は「そこから難しい」
■オリックス 3-0 西武(23日・ベルーナドーム)
西武は23日、本拠地ベルーナドームでオリックスに0-3の零封負けを喫し2連敗。相手先発の山本由伸投手に、両リーグを通じ最多の今季12勝目を献上した。売り出し中の渡部健人内野手がチャンスに代打で登場するシーンがあったが、当代随一の右腕の凄みをまざまざと見せつけられた。
「相手が山本君なので、ロースコアになるイメージはしていました。チャンスではこちらも動いて代打を送りましたが……」。松井稼頭央監督が無念の思いで試合を振り返る。0-2とリードされて迎えた7回。西武は千載一遇の好機をつかんだ。先頭のデビッド・マキノン内野手がカウント0-2と追い込まれながら、そこから粘り、9球目を選んで四球で出塁。続く外崎修汰内野手もカウント0-2から151キロの速球を右前へ打ち返し、佐藤龍世内野手の送りバントで1死二、三塁と詰め寄った。
ここで8番・古賀悠斗捕手の代打として、今月1日の登録抹消以来久しぶりに1軍昇格を果たしたばかりの愛斗外野手が登場。愛斗は山本に対し、それまで今季8打数3安打(対戦打率.375)と相性が良かったが、ここ一番では一味違った。カウント1-1から内角低めのシュートを空振りしたが、152キロを計測しつつ沈む、山本以外にはなかなか投げられるものではない球だ。続く4球目に外角低めのワンバウンドになるスライダーを振らされ、三振に倒れた。
松井監督は続く9番・西川愛也外野手にも代打・渡部を送り、反撃に執念を見せる。しかし、151キロを計測した初球の内角シュートに、渡部のバットは真っ二つ。ボールは三直となって宗佑磨内野手のグラブに収まり、同時にバットの破片はショートの紅林弘太郎内野手の目の前へ転がっていった。
プロ3年目にして山本とは初対戦だった渡部は、「初球から行こうと思って振っただけ。(凄い球だったとか)そういうのは特になかったです」。松井監督は「なんとかあそこまではできても、そこからが難しい投手です。ランナーを二塁、三塁に置いてから、1つギアが上がるわけなので」と指摘。「あの場面であれだけのピッチングをして抑える。もう、『また明日』と思います」と脱帽するしかなかった。
ネット裏にMLB球団スカウトの姿も
結局山本は7回98球、5安打1四球無失点で降板。山本側から見ると、西武とはこれで今季4度対戦し2勝1敗、対戦防御率1.78。過去3度の西武先発はいずれもエースの高橋光成投手で、4月22日の初対決では、高橋が9回2失点完投し、8回途中3失点の山本に投げ勝っている。この日の西武先発・今井達也投手も、6回123球1失点の力投で対抗したが、2回2死満塁での押し出し四球が結果的に命取りとなった。
今季終了後に、ポスティングシステムによるメジャー移籍も噂される山本が先発するとあって、ネット裏には複数のMLB球団のスカウトの姿があった。勝負所での山本の迫力は、その目に焼き付いたことだろう。対戦相手にとってはやはり、真っ向勝負ではなかなか攻略できない一級品だ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)