マジックって何? オリ指揮官が疑問を抱く“造語”…脇役不在の全員野球で狙う頂点
26日のロッテ戦に勝てば優勝へのマジック23、引き分けなら24が点灯する
■オリックス 4ー3 ロッテ(25日・京セラドーム)
驚きを隠せない手品でさえも、絶対に種も仕掛けもあるものだ。オリックスは25日、本拠地で行われたロッテ戦に4-3で勝利し、破竹の7連勝を飾った。貯金は今季最多の27。110試合終了時点で、2位ロッテとは9.5ゲーム差。26日のロッテ戦に勝利すれば優勝マジック23、引き分ければマジック24が点灯する。
3連覇へのカウントダウンが始まりそうな気配が漂う中、25日の試合後に中嶋聡監督は断言した。「マジックってあなたたち(報道陣)がつくった言葉であって……。(チームは)目の前の試合を勝っていくしかないじゃないですか?」。指揮官が言い放った言葉は、妙に納得させられる。
では、もう1つの“つくられた”言葉はどうか。「中嶋マジック」である。1995年にリーグ優勝、1996年にオリックスを日本一に導いた故・仰木彬監督が選手起用や配置転換をズバズバと的中させることから「マジック」の言葉が広まった。今季110試合を終えて、中嶋監督は103通りのオーダーを組んでいる。監督就任3年目を迎えるが、日々どこか違うスタメン表が、選手らに好循環を生んでいることは間違いない。
25日の試合では、遊撃のレギュラー格である紅林をベンチに“温存”し、今季30歳を迎える山足をスタメン起用した。試合前に33歳の西野から「おっさん二遊間で頑張ろう!」と声を掛けられ、2人は躍動。2点を追う6回1死一、二塁で山足がしぶとくライト前に落とし、チャンスを拡大すると、渡部の犠飛で1点差に詰め寄った。直後、2番起用された西野が2死一、三塁から同点適時打をレフトに放つと、一塁側ベンチは大盛り上がりだった。
試合後のコメントにも愛を感じる。日頃、あまり個人名を挙げることのない中嶋監督は「(6回に)山足が繋いでくれたりね。西野も良い仕事をしました」と評価。この一言が“マジック”でもあり、選手らのモチベーションが上がることは間違いない。
「中嶋マジック」は“全員がレギュラー”
2軍調整中も懸命に汗を流したから、今がある。西野は22日に1軍再昇格。ファームでは10歳ほど歳の離れた後輩選手らと必死にバットを振った。「もちろん、悔しい思い、複雑な思いはありました。ただ、自分は自分。やることをやって(自分の)調子を上げないと、チャンスは来ないのが目に見えていたので」。一塁ベース上で見せた渾身のガッツポーズが物語っていた。
指揮官からの何気ない一言が選手を強くする。西野は中嶋監督から「欲しがるな。ヒットを欲しがるなと常々、言われてました。勝手に出るからと」と言葉をもらっていた。焦る気持ちを胸の内に引っ込めてたどり着いたヒーローインタビューに「そんなに多くないチャンスだと思うので、強気でいきました」と33歳は力を込めた。
選手育成、戦力強化は若手にだけ目を向けるものではない。試合終盤の代走、守備固めで存在感を示す小田は「中嶋監督から言ってもらえる言葉は大きい。話してくれるタイミングも凄く勇気がもらえる時が多いですね」と証言。今季ここまで出場11試合の石川は、動きのハードな捕手ながら昼間の2軍戦に出場してナイターに備える“親子ゲーム”を何度も経験してきた。
午前中に大阪・舞洲でバッタリ顔を合わせる機会が多い石川は「また会いましたねぇ〜。僕が親子ゲームの日、どこかから情報を仕入れてるでしょ(笑)。好きだなぁ、野球」と笑顔を見せ、勝負の瞬間に備える。主体性を持って各自が「勝利」のために動く。脇役はいない。これぞ「中嶋マジック」。種明かしをするならば、もはや“全員がレギュラー”なのだ。
(真柴健 / Ken Mashiba)