“もう1つのWBC”日本が2大会連続4度目V 身体障害者野球、主将は涙「本当に嬉しい」

「第5回世界身体障害者野球大会」を制した日本代表【写真:編集部】
「第5回世界身体障害者野球大会」を制した日本代表【写真:編集部】

バンテリンドームで初めて実施開催…主将の松元剛は歓喜の涙

「第5回世界身体障害者野球大会」が9、10日にバンテリンドームで開催され、日本が4戦全勝で2大会連続4度目の優勝を飾った。日本、韓国、台湾、米国、プエルトリコと5つの国と地域の代表が総当たり戦で対決。WBCと同じ2006年に産声を上げ、“もう1つのWBC”とも呼ばれる国際大会で日本が躍動した。

 チーム一丸となった戦いぶりで連覇を成し遂げた。韓国と戦った初戦は、最終回に追い上げられながらも8-7で逃げ切り勝利。2戦目はプエルトリコを4-1で下し、打線が爆発した3戦目は台湾に18-0と圧勝した。

 全勝優勝をかけて迎えた最終戦の米国戦。先発マウンドに上がった早嶋健太投手が堂々のピッチングで米国打線を無失点に抑えると、打ってはクリーンアップを任されたDH・藤川泰行選手と一塁・宮下拓也選手が期待に応える活躍。4-0で勝利した日本が2大会連続の優勝を決めると、スタンドを埋める観客から大歓声があがった。

 今回、日本代表主将を務めた松元剛選手は「本当に嬉しい限りです。本当に大勢の皆様の力強い声援のおかげで4戦全部とることができました。ありがとうございます!」とうれし涙と同時に満面の笑みを浮かべた。自身にとっては第2回大会に続く2度目の優勝となったが、「主将という役も拝命しましたし、地元・名古屋で(の開催)ということで、是が非でも優勝という強い思いがありました」と思いもひとしお。勝利を重ねるに連れ、「優勝に向けて、さらにさらにと団結力がグッと高まったのは実感しました」と喜びを語った。

コロナ禍を経て5年ぶりの開催…早嶋健太が2大会連続MVP

 大会MVPは2大会連続で早嶋選手が受賞。プエルトリコ戦と米国戦の先発を任され、強力打線を相手にしっかりと仕事を果たした。プエルトリコ戦の前夜は「緊張してあまり眠れなかった」と笑うが、米国戦は「大事な一戦を任されて嬉しかった」と頼もしい。金色に輝くトロフィーは「お世話になった方々に見てもらいたいです」と喜んだ。

 大会を通して最高打率を記録した選手に与えられる長嶋茂雄賞には小寺伸吾選手が輝いた。なお、長嶋氏は本大会を第1回大会よりサポートし、大会名誉顧問を務めている。

 第1回大会から4年に1度行われてきた本大会だが、昨年はコロナ禍の影響で延期。5年ぶりの開催となった今年は、初めてバンテリンドームが舞台となった。初日の9日には、現役時代から身体障害者施設の慰問を続け、日本で身体障害者野球が普及する礎を作った元阪急の福本豊氏が来場。日本身体障害者野球連盟名誉理事長を努める同氏が開催宣言を行った他、元中日でメジャーでも活躍した川上憲伸氏が始球式に臨み、大会を盛り上げた。

 大会2日目だったこの日は、およそ4000人の観客がバンテリンドームを訪れた。健常者の野球では見たこともないようなグラブ捌きや送球といったプレー、世界一の座を懸けて必死でプレーする闘志に、日本代表のみならず参加した全チームに対して大きな拍手が送られた。3月に3大会ぶりにWBC制覇した侍ジャパンに続く、“もう1つのWBC”での優勝。第5回世界身体障害者野球大会は、多くの人の胸に響く大会となったようだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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