「最弱」だった世代が“全国2冠” 強豪シニアが大切にする対話「基本は何でも許す」

「世田谷西リトルシニア」の吉田昌弘監督【写真:加治屋友輝】
「世田谷西リトルシニア」の吉田昌弘監督【写真:加治屋友輝】

今年の日本選手権&ジャイアンツ杯を制した世田谷西シニア・吉田昌弘監督

 中学硬式の強豪「世田谷西リトルシニア」(東京)は今夏、リトルシニア日本選手権とジャイアンツカップを制し、“2冠”に輝いた。吉田昌弘監督は選手との1対1の対話を重視。選手から報告事項があった場合はメールやSNSなどは使用させず、直接会うようにしている。Full-Countでは、小・中学世代で日本一を成し遂げた12人の監督に取材。今回は吉田監督の言葉から、子どもの成長を促すヒントを探る。

 世田谷西の選手は、授業で練習に遅れたり、怪我をしたりして通常のメニューがこなせない場合などは、監督に直接報告する。大人との1対1の対話。下級生のうちは上手く話せない選手もいるが、上級生になる頃にはしっかりと自分の意思が伝えられるようになるという。

「基本は子どもにしゃべらせるということですね。話すレベルが高かろうが低かろうが、その子は一生懸命話をすると思うので、聞いてあげることが大事です」

 選手たちから「監督」ではなく「吉田さん」と呼ばれている。「『そう呼べ』と言ってないんですけど『監督』と呼ぶ子はまずいませんね」。強豪チームでは珍しいが、監督と選手という立ち位置ではなく、一個人として意識させることで対話しやすい環境を作り出している。

「基本は何でも許す」も…生活の乱れには厳しく注意

 守備位置も決めつけることなく、複数ポジションを経験させて適性を見極めていく。そのポジションに納得していない選手がいた場合は、とことん説明する。「納得してそのポジションをやるのか、やらないのかっていうのは凄く大事。僕は親にも子どもにも隠したりはしないので、対話して納得させる。中学までは分かりやすい方がいいかなと思っていて『ここがいいから使う』とか『もう少しこうした方がいいよね』という話はします」

 部員は1学年約50人の大所帯。個性豊かな選手たちを指導していくうちに「基本は何でも許すという方針に変わりました」という。野球のことで怒ることはないが、生活に乱れがあった場合などは厳しく注意する。「私生活で乱れがあったら普通に話はしますよね。自分でやったことは自分に返ってくる。それが自分の人生にとっていいことか悪いことか、最低限のことは言います」。

 今夏2冠に輝いたチームは、新チーム結成当初から練習試合でもなかなか勝てなかったという。だが、夏の大会前に「チームに気遣いができる」選手を主将に据えると、快進撃が始まった。

 固定観念にとらわれることなく、一人一人と向き合い適材適所を見極めた結果、「素材的には最弱」だった世代が2冠に輝いた。吉田監督は今月25日から5夜連続で行われる「日本一の指導者サミット」に参加予定。その育成法は、アマチュア指導者たちの指針となるはずだ。

今夏の全国2冠…世田谷西リトルシニア・吉田昌弘監督も“参戦決定”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では9月25日から5夜連続(午後8時から)でオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催する。小・中学生の野球カテゴリーで全国優勝経験を持つ全12チームから、手腕に定評のある監督たちがYouTubeライブに登場。指導論や選手育成術、円滑なチーム運営のヒントを授ける。詳細は以下のページまで。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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