巨人劇的勝利の立役者2人に共通点 攻守だけでない万能さ…原監督称賛「縁の下の力持ち」

サヨナラ打を放った巨人・増田大輝(中央)【写真:小林靖】
サヨナラ打を放った巨人・増田大輝(中央)【写真:小林靖】

延長12回カウント3-2「冷静に配球を読むことができました」

■巨人 4ー3 ヤクルト(18日・東京ドーム)

 時には“脇役”にスポットライトが当たる試合があってもいい。巨人は18日、本拠地・東京ドームで行われたヤクルト戦に延長12回の末、4-3でサヨナラ勝ち。先頭の代打・北村拓己内野手が二塁打でチャンスをつくり、途中出場の増田大輝内野手が自身初のサヨナラ打を放った。

 4時間28分の総力戦だった。3-3で迎えた12回。先頭打者として船迫大雅投手の代打で出た北村拓は、ヤクルトの守護神・田口麗斗投手が初球に投じた外角低めのスライダーを思い切りよく振り抜き、レフト線を破る二塁打で出塁。1死一、二塁となった後には、8回に坂本勇人内野手の代走で出て三塁の守備に就いていた増田大が打席に入った。「代走はともかく、打者としてはチャンスをあまり経験していないので、バッターボックスへ向かう時は心臓バクバクでした」と明かす。

 とはいえ、打席に立つ機会は少なくても、プロ8年目の30歳にはどことなく落ち着いた雰囲気がある。チェンジアップとスライダーを見送り、カウント2-0とボールが先行。3球目と4球目はいずれも外角のシュートを空振りしたが、内角低めのカットボールを見送りフルカウントとなった後、読み通りの外角シュートを一閃。打球は前進守備の右中間を深々と破り、試合を決めた。「2ボールとなってからは、冷静に配球を読むことができました。右方向へ押っ付けて打とうと思っていて、バットの芯でとらえることができたので、打った瞬間に抜けると思いました」とうなずいた。

 増田大は今季、出場26試合中、約7割の18試合が代走。その他は「1番・中堅」でのスタメンが1試合、守備固めが5試合、代打が2試合だ。二塁、三塁、左翼、中堅、右翼の5つの守備位置をこなしているが、打者としてはわずか9打席で、2本目のヒットがサヨナラ打となった。原辰徳監督は「どちらかと言うと縁の下の力持ち。日頃の努力がいい結果につながってよかったなと思いますね」と称えた。

 一方、チャンスメークした北村拓は6年目の28歳。こちらは今季、5試合のスタメンを含めて24試合に出場し、28打数5安打(打率.179)。内野の全ポジションをこなしている上、代打で出た時には打率4割(10打数4安打)を誇っている。

巨人・北村拓己【写真:矢口亨】
巨人・北村拓己【写真:矢口亨】

増田大は2020年、北村拓は今季に投手として敗戦処理

 増田大と北村拓には、共通点がある。投手として緊急登板した経験を持っていることだ。増田大は2020年8月6日、敵地・甲子園球場での阪神戦で、0-11と大量リードされた8回1死から登板し、2/3回(打者3人)を無安打1四球無失点に抑えた。北村拓は今月2日、敵地・横浜スタジアムでのDeNA戦で、4-12の8回に登場。山本祐大捕手にソロ本塁打を浴びたものの、1回(打者4人)1安打1失点でしのいだ。

 野手が登板することに関しては賛否両論あるが、少なくともこの2人は敗戦処理の役割を果たし、チームの苦しい台所事情を救った。増田大は「野手は投げる機会がなかなかないので、(北村拓は)『顔には出さなかったけれど、新鮮で楽しかった』と言っていましたよ」と笑う。

「達成感というか、毎日頑張ってきてよかったなと実感が湧きます」とヒーローになった余韻に浸った増田大。おそらく次の試合からはまた、地味でも重要な仕事をこなし続ける。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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