巨人支える至宝にゲキ「もっと大きくなって」 指揮官の表情変えた“逃げ”の姿勢

巨人・原辰徳監督【写真:矢口亨】
巨人・原辰徳監督【写真:矢口亨】

先発グリフィンは33日ぶりの登板で5回79球無失点

■巨人 4ー3 ヤクルト(18日・東京ドーム)

 巨人は18日、本拠地・東京ドームで行われたヤクルト戦に延長12回の末、2試合連続、今季10度目のサヨナラ勝利を収めた。原辰徳監督の8投手を駆使した継投が、最後に実を結んだ。現在リーグ4位。残り10試合、逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出に望みを掛ける。

 先発のフォスター・グリフィン投手は、5回を79球で2安打無失点に抑えた。だが、8月16日の中日戦以来、怪我と発熱を挟み33日ぶりの登板とあって、最初から長いイニングを投げさせるつもりはなかった。原監督が「久しぶりの投球だったけれど、よく投げてくれた」と評した上々の内容で、この回限りでマウンドを降りた。

 台所事情は苦しかった。コンディション不良で6月30日に出場選手登録を抹消されていた守護神・大勢投手は、前日(17日)の同カードで2か月半ぶりに1軍復帰を果たし、9回1イニングを投げて1失点。この日もベンチには入っていたものの、よほどのことがない限り連投はさせられない状況だった。さらにドラフト5位ルーキーの船迫大雅投手も前日までに2連投しており、3連投は避けたいところだった。

 しかし、昨年の育成ドラフト1位から這い上がった松井颯投手が両チーム無得点の6回に2番手として登板するも、2四球に自身の悪送球が絡んで無死満塁の大ピンチを招く。原監督はたまらず、プロ12年目のキャリアを持つ今村信貴投手にスイッチ。なんとかこの回を、村上宗隆内野手の中犠飛による1失点のみに収めた。

 3-2と1点リードして迎えた9回には、中川皓太投手が2死二塁で塩見泰隆外野手に同点二塁打を浴び、延長にもつれ込む。そして原監督が厳しい表情を浮かべたのは、12回の守備だった。

 この回から平内龍太投手が7番手で登板。四球と犠打で1死二塁のピンチを背負い、強打者の山田哲人内野手を迎えたが、2020年のドラ1右腕は、この日最速153キロを計測していたストレートを、なかなか投げなかった。カーブ、カットボール、スプリットなど、9球目までは全て変化球。ファウルで6球粘られ、カウント3-2からの10球目に、ようやく151キロのストレートを投じたが、内角低めに外れ四球で歩かせた。

巨人・平内龍太【写真:中戸川知世】
巨人・平内龍太【写真:中戸川知世】

阪神との2連戦を前に「選手は意地を見せてくれると思う」

 1死一、二塁。原監督はベンチを飛び出し、厳しい表情で平内に何事か言葉をかけると、船迫投入の“禁じ手”に踏み切った。平内については「あれだけ逃げて、逃げて、逃げてでは勝負になりません。彼に限ったことではないけれど、一番多く練習しているボール(ストレート)を、追い込んでから投げられないというのは果たしてどうなのかと思います」と苦言を呈する。そして「(平内は)もっともっと大きくなってもらいたい人ですから、我々も腫れものに触るようなことではいけません」と期待を込めた。

 原監督が「今日の最後の砦」と表現した船迫の初球を、サイン違いだったのか、いきなり捕手の岸田行倫が逸らした。二、三塁となったことから、村上を申告敬遠で歩かせ満塁策を取ったが、ここから赤羽由紘内野手を空振り三振に仕留め、ホセ・オスナ内野手も遊ゴロに打ち取り、相手に勝ち越しを許さなかった。この粘りが、その裏の増田大輝内野手のサヨナラ打につながった。

「本当は1イニングを任せられる投手が、たくさんいればありがたい。イニング途中で代えられない投手陣になってくれるとね、私としても非常にありがたいのですが、なかなか……全員の力でなんとか、というところですね」。指揮官は複雑な表情を浮かべていた。

 20日からは敵地・甲子園で、既に優勝を決めた阪神との2連戦。今季は5勝17敗1分と圧倒されている。原監督は「選手はしっかり意地を見せてくれると思います。負けん気の中で勝負して、どっちが勝つかというところを、見ている方々は一番楽しみにしているわけですから、負けん気を出して立ち向かうことが大事だと思います」と語気を強めた。特に投手陣に、真っ向勝負を挑む心意気を求める。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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