歴代最弱から3年連続日本一 強豪シニアがこだわる“諦めさせない”育成「全員が二刀流」

取手リトルシニア・石崎学監督【写真:伊藤賢汰】
取手リトルシニア・石崎学監督【写真:伊藤賢汰】

「何かがいいだけでは勝つのは難しい」取手シニア・石崎監督は「全部」を重視

 中学硬式野球の強豪「取手リトルシニア」(茨城)を率いる石崎学監督は、チームが創部された2007年から指揮を執る。守備と打撃、どちらを重視しながらチームを5度の全国制覇に導いてきたのだろうか。返ってきた答えは「全部です」。Full-Countでは、小・中学世代で日本一を成し遂げた12人の監督に取材。石崎監督はバランスの取れたチーム作りをすることが、勝つことへの近道と考えている。

「日本一になればなるほど、何かがいいだけでは勝つのは難しいと実感させられます。ただ、ピッチャーは球数制限があるので、1試合目にエースが投げたとして、2試合目はお互いに2番手、3番手が投げ合うことになる。だからスーパーなエースが1人いても、2番手、3番手がそこそこだったら、全国大会は勝っても2つまでですね。3日目は勝てません」

 2021年、「歴代最弱だった」チームが、坂本慎太郎(関東一)、藤田一波(智弁和歌山)の2年生投手2人を軸に、春のリトルシニア全国大会で頂点まで駆け上がった。その後、石崎監督は新チームで最上級生となった2年生野手に「日本一の投手2枚が残っていて、それで勝てなかったら野手がダメだったって言われるからな」と冗談交じりに言った。

 その言葉に奮起した選手たちは2022年のジャイアンツカップで初優勝。先輩たちのひたむきな姿勢は後輩にも受け継がれ、今春のリトルシニア全国大会では2年ぶりに優勝するなど、3年連続で日本一の栄冠を勝ち取ることができた。

 全国で勝ち上がっていくために投手力の底上げが必要なのは重々承知してはいるが、投手だけに特化した育成はしない。平日練習ではメンバーやメンバー外を分けることなく、グラウンドに来た順から班に分かれ、ローテーションしながら全員が同じメニューを消化。投球練習はその後に行わせる。そこには「簡単に諦めさせない」ことをモットーとする石崎監督の親心が見え隠れする。

目的は高校、大学と野球を続けてもらうこと「何かに特化させると抜け道がなくなる」

「中学は全員が二刀流だと考えています。この子は投げることしかできないだろうなという子も野手の練習はやらせます。内野の練習をすることはピッチャーのフィールディングにもつながります。何かに特化させると、高校に行った時、それがダメだったら抜け道がなくなってしまいます」

 目的は中学で終わるのではなく高校、大学まで野球を続けてもらうこと。投手の肩肘にも細心の注意を払っており、投球数は練習や実戦も含め、週250球以内を厳守する。家でのキャッチボールも禁止するなど、徹底ぶりがうかがえる。

 結成17年にして全国有数の強豪チームへと成長した取手シニア。石崎監督は今月25日から5夜連続で行われる「日本一の指導者サミット」にも参加予定で、全国の指導者や保護者とともにチームづくりや育成期の指導法について考える。子どもたちの可能性に蓋をすることなく、先を見据えた育成法は参考にすべき点が多い。

全国制覇5度…取手リトルシニア・石崎学監督も“参戦”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では9月25日から5夜連続(午後8時から)でオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催する。小・中学生の野球カテゴリーで全国優勝経験を持つチームから、手腕に定評のある12人の監督がYouTubeライブに登場。指導論や選手育成術、円滑なチーム運営のヒントを授ける。詳細は以下のページまで。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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