“エース格”の配置転換も成功…現れた2人の新星右腕　元オリ投手が挙げる「3連覇」の要因

強力先発投手陣に加わった2人の新星

　オリックスと巨人で投手としてプレーし、昨季限りで現役を退いた鈴木優さんは現在、米国に約2年の予定で留学中だ。現地で感じた“ベースボール事情”を、不定期でレポートしてもらっているが、第10回の今回は特別編として、古巣・オリックスのパ・リーグ3連覇の喜びと、強さの要因を綴ってもらった。

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　オリックス・バファローズ、3年連続のパ・リーグ優勝！　本当におめでとう！　感動をありがとう！

　私は高卒で入った2015年から2021年までの7年間、オリックスの一員として過ごさせてもらったが、優勝した最後の1年以外は長いことBクラスの低迷期を見てきたため、その当時からは考えられないほど強いチームへと進化した。

　当時共に寮に入り、練習や試合を過ごしてきた仲間も今年の優勝メンバーとして多く在籍しており、本当に自分のことのようにうれしく思っている。そこで、今年のオリックスの優勝のポイントを考えてみた。

　1つ目は山下舜平大投手と東晃平投手という2人の新星の登場だ。

　今シーズンのオリックス投手陣は、20日時点で防御率1.32と圧巻の山本由伸投手、その山本投手と共にWBCにも選ばれ安定感のある宮城大弥投手を筆頭に、先発ローテが安定した成績を残し続けた。その中でも前半戦は山下投手、後半戦は東投手が活躍し、エース格2人が投げる以外の試合で大きく貯金を増やせたのは大きい。

　デビュー戦勝利から8月までで9勝を挙げ、防御率も1点台と抜群の成績を収めていた山下投手が怪我で離脱してしまったところで、育成出身高卒6年目の東投手がローテに入り自身5連勝と、チームのピンチを見事にカバーした。

　山下投手は入団後1年だけ一緒にプレーしたが、高卒1年目とは思えないクレバーさを持っていたのが印象的だった。高卒で初めから自分で考えて行動できる選手は少なく、言われたことをこなす選手が多いなか、彼は言われたことに加えて自分から質問し、提案していた。それだけに、今回の活躍は納得させられる結果だった。身近で見ていた選手がこのように1軍の舞台で活躍しているのは感慨深いものがある。

ベストパフォーマンスを引き出した指揮官の采配

　東投手は私が現役時代に特に仲良くしていた選手の一人だ。彼は普段はあまり感情を表に出すことはないが、自分が決めたことはしっかりやり通す芯のある選手だ。

　私がオリックスで2軍の先発ローテで回っていた頃に、東も一緒にローテに入っていて、三振数や投球回をよく2人で競ったり、お互いの悩みや知識を共有したものだった。普段の食事や遠征先などでも2人でいることも多かったので、うまくいかない時期なども見てきた彼が、6年間地道に努力を積み重ねてきてしっかり結果を出したのは、個人的にも本当にうれしい。

　この2人がしっかり結果を残せたのも中嶋聡監督とピッチングコーチが相談し、本人たちのベストパフォーマンスを出せる状態をつくっているからだ。

　私が初めて1軍で投げた時は、回数を重ねると、2軍で投げるのとは比較できないほどの疲労が溜まり、徐々に思うような投球ができなくなったのを覚えている。もちろんそれは僕の実力不足なのだが、このようなことがないように中嶋監督とコーチが本人と話しつつ、無理をさせないペースでコンディションを管理していたのだろう。実際に山下投手も最初はどんなに良いピッチングをしても1度抹消し、中10日を空けるなどしていた。

　こういった目先よりもシーズン通しての選手の活躍や、コンディションを第一に考えた中嶋監督の采配が、安定して強いチームをつくれている理由だと、OBの目線でも思う。

救援陣でリーダーシップを発揮した右腕

　そしてもう1つのポイントが、シーズン途中からリリーフに配置転換した山岡泰輔投手の存在だ。

　今季のオリックスは最強先発陣に負けず、リリーフ陣も安定した成績を収めている。ベテランの平野佳寿投手、比嘉幹貴投手に加え、WBC組の山崎颯一郎投手、宇田川優希投手、阿部翔太投手など、若手・中堅・ベテランがバランスよく配置され、それが見事にハマる様子は目を見張るものがあった。

　なかでも、シーズン途中からリリーフに転向し、回またぎもいとわなければ、1イニング限定のセットアッパーとしても、そしてクローザーとしても、どんな展開でもしっかりと結果を残してきた山岡投手の活躍は、大きかったように感じる。

　それに加えて山岡投手は、存在自体に大きな効果がある人だ。リーダーシップがあり、後輩の相談にも真摯に答えてくれるなど、みんなに慕われ、投手陣を引っ張ってくれる。また言葉だけでなくトレーニングも人一倍黙々とこなし、後輩の教科書になってくれる。戦力以上にプラスになっていたのではないかなと思っている。

　圧倒的優勝を果たしたオリックスだが、ここからはポストシーズンが待っている。CSはファイナルからの出場になるため、ファーストステージで勝ち上がってきたチームより休養が取れ、コンディションを整えられることや、ホーム球場で自慢の先発陣を注ぎ込めるのでオリックスにかなり有利に思えるが、ポストシーズンは何が起こるかわからない。

　だがそこも、中嶋監督の巧みな試合運びと、3連覇を成し遂げた選手たちの力で勝ってくれることを願っている。12球団で唯一の権利を持つ、2年連続日本シリーズ制覇に向けて最後の最後まで頑張ってほしい。

（「パ・リーグ インサイト」鈴木優）

（記事提供：パ・リーグ インサイト）