時間制限対策へ…中学軟式強豪が導入する「5分間ゲーム」 あらわになる選手の“性格”

私立駿台学園中・西村晴樹監督(左)と勝谷大コーチ【写真:大利実】
私立駿台学園中・西村晴樹監督(左)と勝谷大コーチ【写真:大利実】

東京の軟式野球の強豪・駿台学園中は2022年の全中で初優勝

 中学軟式野球の強豪、東京都北区の私立駿台学園中は、2022年の全国中学校軟式野球大会(全中)で初めて全国の舞台で優勝を遂げた。2011年4月に就任した西村晴樹監督にとって、全中と全日本少年軟式野球大会を合わせて11回目の全国出場で手にした頂点だった。Full-Countでは、小・中学世代で日本一を成し遂げた12人の監督に取材。「時間がかかりましたが、『日本一』を目標に掲げてOBも含めて頑張ってきた積み重ねが、初優勝に結びついたと思います」と語る。

 西村監督は二松学舎大付高、日体大を経て社会人や米独立リーグでプレー。2007年に駿台学園中に赴任し、コーチを経て監督に就任した。重視するのは「守備・走塁」で、就任時から変わらぬスタイル。これには、野球部を取り巻く環境も関係している。

 部員は1学年に20人前後で、練習時間は午後3時半~7時。学校のグラウンドは高等部の部活が使うため、足立区や荒川区のグラウンドへ移動して行う。常時白球を追える環境ではなく、週2日ほどは校内の柔道場を使って室内でのマット運動や走塁・帰塁練習を実施。「ノーヒットでも勝てる野球を追求しています。練習時間や環境を考えると、そうした細かい作業の積み重ねになってくる」と語る。

 グラウンドの練習で特徴的なのが、1イニング表裏をわずか5分間で終わらせながら5~7イニングを試合形式で行う「5分間ゲーム」だ。

 東京都軟式連盟の公式戦は、『1時間45分』という時間制限が設けられている。1点でも先行した方が有利な中で、いかに攻撃の時間を長く、守備の時間を短くするかという観点から始めたものだ。攻守の切り替えをスピーディーにテンポ良く行わなければならないため、短時間で判断する習慣も身に付くし、2ストライクから打席を始めることで初球から振っていく積極性にもつながる。

「とにかく走り回るので疲れるのですが、疲れた中でも『気を使える選手』『頑張りきれる選手』も見えてくるんです。気配りができる子は、自分からネットを出したり、キャッチャー防具を着けるのを手伝ったりできる。そうしたプレー以外の判断材料にもつながります」

柔道場での走塁練習の様子【写真:高橋幸司】
柔道場での走塁練習の様子【写真:高橋幸司】

「人のために本気になれ」がスローガン

 室内でのマットを使った走塁・帰塁練習も、数多くの場面を想定してバリエーション豊富に徹底して行う。「特に三盗については、全球駆け引きして勝負してほしい。相手投手の気が抜けている時とベンチがサインを出すタイミングが合わない時もありますから」。

 四球で出た走者を犠打で送り、さらに三盗を仕掛け、本塁に返せればそれだけでグッと勝利に近づく。「本当に地味。変わったことをやっている意識はない」という積み重ねが、12年目での日本一につながった。

 印象的なのは練習の1つ1つに取り組むスピード感と共に、選手たちが互いに修正点などを指摘し合い、高め合っていることを感じるところだ。「人のために本気になれ」がスローガンの1つ。俊敏さの中での思いやりは、チームの一体感醸成にもつながる。

「勝負に本気になれて、人にも優しい。そういう選手が高校に進んでも活躍できる。疲れている中でも気を使えて、頑張り切れる。そのカテゴリーでは他の学校に負けてほしくないんです」。そう語る西村監督は、今月25日から5夜連続で行われる「日本一の指導者サミット」にも参加予定。限られた環境の中で日本一を勝ち取った取り組みは、大いに参考になるはずだ。

私立駿台学園中・西村晴樹監督も“参戦決定”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、9月25日から5夜連続(午後8時から)でオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催する。小・中学生の野球カテゴリーで全国優勝経験を持つ全12チームから、手腕に定評のある監督たちがYouTubeライブに登場。指導論や選手育成術、円滑なチーム運営のヒントを授ける。詳細は以下のページまで。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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