大量出血に鼻骨骨折も「出られます」 2軍でも腐らぬ闘志…福田周平が燃やす“野望”

オリックス・福田周平【写真:小林靖】
オリックス・福田周平【写真:小林靖】

オリックス・福田周平外野手「鼻を骨折しても、試合には出られます」

■楽天 8ー2 オリックス(1日・京セラドーム)

 グラウンドで躍動するため、力強く生きる。オリックス・福田周平外野手の奮闘が際立っている。3連覇を決めた9月20日は1軍メンバーに入っていなかったが、9月23日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で再昇格。その後、9月は6試合に出場し、20打数6安打の打率.300をマークするなど、気を吐いている。

 常勝軍団の形成に、必要不可欠な存在であることは間違いない。福田の“転機”は2021年の春季キャンプだった。主に二遊間を守る内野手だった福田は、外野手用のグローブを人生で初めて手にした。「自分のやるべきことをグラウンドで忠実に再現するだけ。それしかやることはない。成長して、チームに貢献したいと思っています」。試合に出られるなら、ポジションにこだわりはなかった。

 不屈の闘志で、広い外野グラウンドを縦横無尽に駆け回った。シーズン途中からセンターの定位置を掴み、25年ぶりリーグ優勝に貢献。黙々と練習を積み重ね、2022年にはゴールデングラブ賞を獲得。悲願の日本一にも導いた。3連覇を成し遂げた今季は出場31試合にとどまっている(1日終了時点)。7月7日に出場選手登録を抹消となっても「ファームでプレーすることになっても、レベルアップを念頭に置きながら(力を)抜かずにやっていました」と灼熱の大阪・舞洲で懸命に汗を流してきた。

 アクシデントも乗り越えた。2軍で迎えた8月16日の試合前練習ではノックの打球が顔面に直撃。出血が止まらず、白いタオルで顔を押さえながら、トレーナーに付き添われて球場を出た。ただ……。翌日の練習には、福田の姿があった。

「鼻を骨折しても、試合には出られます。そのつもりで次の日に練習して(別の箇所を)負傷したですけど。でも、それで明確にわかった。ここまで(の強度)はいけると。今、それ(負傷)がすごく成長するきっかけになっています」

 骨は折れても、心は折れなかった。「どんな経験も、僕にとってはプラスだと思う。周りの方からはどう見られているのか、僕はわからないです。だけど、僕の中では全てが良い経験。充実したものになると信じて捉えています」。前向き思考が、31歳の成長を後押しする。

歓喜の瞬間も猛ダッシュで仲間のもとへ

 今季は2軍暮らしが長かった。優勝を決めた日も出場選手登録を外れていた。それでも、3連覇を成し遂げた瞬間、勢いよくグラウンドへ飛び出した。胴上げ投手の山崎颯が捕手の森を抱えると、選手会長のラオウこと杉本が最初に飛び込んだ。すぐ後ろには、副会長を務める福田の姿があった。

「もちろん優勝メンバーに入って、その瞬間を味わいたいというのが、プロ野球選手だったらあると思う。ただ、誰しもが最高の経験をできるわけではない。それ(3連覇)を噛み締めて、みんなと喜べてよかったなと思います」

 次なる野望は、2年連続の日本一。改めて闘志を燃やす。再昇格を果たした福田にとって“消化試合”はない。「いやぁ……もうね。1打席1打席すごく貴重です。練習じゃ身につかないことばかり。試合でどれだけ、自分(の姿勢)を表現できるか。143試合の1試合、その1打席に変わりはないですから」。そう話すと、ふと視線を上げる。

「出してもらえる機会は、どの打席もすごく大事な場面。重要な試合かどうか、順位の変動とかは(試合が)終わってから。選手は目の前のプレーに必死だから」。10月1日の楽天戦(京セラドーム)にも「1番・中堅」で出場し、初回先頭打者としてヒットを放った。塁上では自信を深めた表情で、ベンチのナインに視線を送る。覚悟を決め、歓喜に咲き乱れる準備を整えている。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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