大谷翔平のHR王は「イチローがいたから」 進化する日本野球…王貞治氏が称える功績
イチローがメジャーに挑戦してから22年…いつかは大谷の背中を追う若い選手も
頂点を見た者だからこそ、その価値を理解できる。メジャーリーグでは1日(日本時間2日)にア・リーグのレギュラーシーズン全日程が終了し、エンゼルスの大谷翔平投手が44本塁打で日本人では初の本塁打王に輝いた。ソフトバンクの王貞治球団会長は「10年くらい前までは誰もそんなことを考えられなかった」と最大限の賛辞を送りつつ「イチローがいなかったら、大谷はいないよ」と言う。
イチロー氏は現役時代、MLBで2度の首位打者に輝くなど通算3089安打を放った。王会長は「首位打者を取るのも難しいんだけれど」としながらも「ホームランバッターっていうのは、一部の選手にしかチャンスはないわけよ。ボールを遠くに飛ばせないといけないから」と、大谷の本塁打王の価値を強調する。打率なら全ての選手にトップの可能性があるが、ホームランは飛ばす能力があってこそ。だからロマンが、価値がある。
「イチローが行って、1年目からMVPになるほど活躍して。それよりももっと大きなスケールで大谷くんがホームランをね。やっぱり、ホームランで、アメリカの中で(タイトルを)取るというのはね。レフトにもセンターにも、ライトにも、速い球にも緩い球にも強い。アメリカの中でも一目置かれる打者になっているよね。アメリカの中でも球史に残る立場になったからね」
3月のWBCで侍Jが優勝「アメリカの人たちも見る目が変わってきている」
3月のWBCでも野球日本代表「侍ジャパン」が3大会ぶりの優勝。王会長も日本野球のレベルの上昇を確かに感じており、大谷についても「我々の時代は(アメリカの野球を)見上げていた。彼は見下(みお)ろしているんじゃないか」と表現する。イチロー氏が海を渡ったのが2001年、大谷は2018年。2人のスケール、プレースタイルを比較しつつ、王会長は時代を切り拓いていったイチローの存在にリスペクトを込める。
「イチローがいなかったら大谷はいないよ。イチローがあそこでMVPになっているし、10年以上200安打を打って。アメリカの中でも一目も二目も置かれる打者として頑張った。今度はまたスケールが大きい大谷がね、日本の野球に対しても、アメリカの人たちの見る目も変わってきているだろうから。今はやる以上はアメリカも真剣だしね。そういうところまで日本の野球のレベルが上がったのは、イチローがあれだけ頑張ったからだね」
大谷がイチロー氏の背中を追ったように、今度は大谷の背中を追ってメジャーリーグに挑む選手が出てくると期待する。「彼が頑張ってくれれば、若い人がまたね。彼が元気なうちにチャレンジしていく選手が日本に出てくる」と“予言”した。右肘の手術をしたことも当然耳に届いており「「来年はピッチャーやらないんだって? 肘がなんともないんだったら、またホームラン王を取ってほしいね」とエールを送った。
(竹村岳 / Gaku Takemura)