山本由伸の飽くなき探究心「まずは楽しむこと」 カメラクルーに見せた“敬意”
オリックス・山本由伸投手、レンズを覗いて「色はないんですか?」
■オリックス 3ー0 日本ハム(2日・京セラドーム)
ドシっと重たいテレビカメラを、三脚から持ち上げた時だった。オリックスの山本由伸投手は、顔馴染みのスタッフに真っすぐな質問をぶつけた。「そのカメラって(映像が)ブレることあるんですか?」。気になることは、その場で解決する探究心が、エースをまた強くする。
「いつも綺麗に(映像を)撮ってくれていて、本当に凄いなぁ……と思って見ていたんです。(機材は)重たいだろうし、僕ら(選手)は、練習中すぐにどこかへ走っていってしまうので(笑)。絶対、どこに行った? ってなると思うんです。だから(中継)カメラマンの方のプロ意識というか、専門性の高さが凄いなと思っています」
気遣いの言葉を発するだけでない。「なんでも経験してみないとわからないですから」と、TVクルーと“交代”して、カメラを担いだこともある。「うわぁ、意外と重いっすね!」。無邪気に笑顔で“職業体験”をしたかと思えば「あれ? カラフルじゃない……。色はないんですか?」と疑問に思ったことはすぐに問いかける。
覗いたレンズの先には“白黒の世界”が見える。「あんなに綺麗に(映像が)映るのに、カメラマンの方は色を想像して撮っているんだって初めて知りました。やっぱり、何をするのもプロの方に教わってみないとわからないですね」。誰よりも“プロ意識”の高いエースは、職人気質。専門職に興味を示すのだった。
「僕らも、もちろん練習をしっかりしますよ。ただ、シーズンは長いので、スイッチをどこで入れるかが大事なのかなと思います。とくに先発になってから強く思うようになりました。(練習も)毎日真剣ですけど、2日前にブルペンに入るので、そこが僕のスイッチです」
山本由伸の“成長論”は「楽しいと思えるから、どんどん考え事ができる」
先発登板の2日前になれば、ユニホームを着てブルペン投球を行う。それまでは練習着で汗をかくが、気持ちを入れるのは“仕事着”に着替えてからだと言う。「練習をたくさんしているからこそ(抑えられる)自信はあるというか。もちろん、不安な気持ちはあります。でも、ちゃんと(マウンド)で出来たら絶対に抑えられるというなんとなく自信があるんです。そこまで突き詰めるのが大変なんですけどね」。サラッと話すが、言葉の重みは計り知れない。
2日に本拠地・京セラドームで行われた日本ハム戦は、7回3安打無失点の好投で今季16勝目をあげた。すでに確定している最多勝のタイトルに加えて、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振賞の獲得も当確。史上初となる3年連続の「投手4冠」に大前進。「良いところもたくさんありますけど、反省も。またレベルアップできるように練習していきたいです」。シーズンを完走し、防御率1.21と驚異的な成績を残しても、絶対的エースは成長を止めない。
「楽しいと思えるから、どんどん考え事ができるんです。僕にだって不安はあります。でも、深く考えても(前に)進めない。まずは、楽しむこと。みんなで喜ぶことを想像する。練習していないことは本番で発揮できませんから」
歓喜の瞬間までもイメージする。無数のフラッシュライトを浴び続ける理由がある。
(真柴健 / Ken Mashiba)