練習時間短縮でも日本一…中学強豪の「取捨選択」 成長促すための“やらない”決断
平日は午後6時半まで…土日は午前中のみで結果を出した東海大静岡翔洋中
限られた時間でも、無駄を省けば結果を出せる。今夏に開催された全国中学校体育大会の軟式野球で29年ぶりに優勝した静岡・東海大静岡翔洋中は、数年前と比べて練習時間を大幅に減らしている。練習メニューに優先順位をつけ、短時間でも日本一になれると証明した。
日本一になるチームは有望な選手を全国から集め、練習量も他をしのぐイメージが強い。しかし、東海大静岡翔洋中の選手は全員が静岡県内の自宅から通っている。練習は火曜日が休みで、それ以外の平日は2時間半。土日祝日や長期休みは午前8時から11時半まで練習や練習試合をして、昼ご飯を取ったら解散するのが通常の流れとなっている。
チームを指揮する寺崎裕紀監督は2020年、2度目の監督に就任した。当時は土日祝日や長期休みは朝から夕方まで丸一日練習していた。練習で選手の技術は高まった。ただ、選手の体が大きくならない悩みがあった。寺崎監督は他のチームの指導者や専門家に、体を大きくする方法をたずねた。すると、共通する答えが返ってきたという。
「練習をやらなければ体は大きくなると言われました。結局、練習量が多くなれば、エネルギーを消費してしまいます。学校が休みの日は半日練習に変更し、平日練習も短くしてエネルギーの消費量を減らすようにしました。練習時間が減ってから、体が大きくなる選手が増えたと感じています」
攻撃に重点を置いたメニュー…守備練習は大幅減
練習時間が少なくなれば当然、それまでと同じ内容はこなせなくなる。寺崎監督は攻撃に重点を置いたメニューを組み、守備練習を大幅に減らした。例えば、1死三塁の守備では1点を覚悟し、内野も外野も前進守備を敷かない方針に変更。これまでは相手のエンドランやスクイズなどを封じるため、様々なフォーメーションを練習していた。指揮官は「1イニングを1点でしのいで、打力で2点、3点を取るチームをつくっています。守備のフォーメーション練習はかなり減らしました」と説明する。
週末の練習試合も効率を重視した方法に変えた。今までは2校を招いて、それぞれが2試合ずつを消化する変則ダブルヘッダーを組んでいた。野球部の専用グラウンドに他校を招く東海大静岡翔洋中は、ホームになるため第1、3試合。空き時間となる第2試合を持て余す形になっていた。昼食を挟んで第3試合が終わるのは午後3時を過ぎる。グラウンド整備や片づけをすると夕方になっていた。
今は1校だけを招いている。中学2年のチームが自分たちのグラウンドで午前中に2試合をこなし、中学1年のチームは他校に遠征して午前中に2試合を戦う。試合が終わったら昼ご飯を食べて解散。その後に自主練習する選手もいれば、野球以外の用事や勉強をする選手もいる。「限られた時間で練習に優先順位をつけて特化する考え方に変わりました」と寺崎監督。チーム力の向上と練習量が比例するとは限らない。
(間淳 / Jun Aida)
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