「餌を撒いておく」 選手の成長導く“褒め方”とは…学童日本一監督の取り組み
意識を持って練習する選手を「褒めるようにしています」
選手の観察も指導者の大切な役割となる。福島県いわき市の小学生軟式野球チーム「常磐軟式野球スポーツ少年団」は、創部40年で全国大会に35度出場。日本一に4度輝いている。チームを指揮する天井正之監督は9月29日まで5夜連続で開催された野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベント「日本一の指導者サミット」で、軸とする指導の1つに選手への声かけを挙げた。伝える言葉やタイミングで選手のモチベーションは大きく変わるという。
常磐軟式野球スポーツ少年団は毎年、選手、指導者、保護者が一体となって全国大会出場を目指している。3代目監督を務める天井監督は「目標と頑張る理由を明確にすれば、子どもたちは自然と努力します。私たちのチームは子どもも保護者も全国大会に出るために努力を惜しまない気持ちを持っています」と話す。
選手の成長をサポートする上で、重点を置いているのは声のかけ方。選手の褒め方や褒めるタイミングが大事になるという。天井監督は「褒める餌を撒いておきます」と表現する。
「階段を上るようにアドバイスして、できた時に褒めるようにしています。上手いプレーを褒めると上手い選手だけ褒めることになってしまうので、意識を持って練習している選手を褒めるようにしています。褒められた選手のモチベーションは、それまでと全然違ってきます」
問われる指導者の観察力…子どもの変化を「見逃さないことが大切」
選手を褒める基準は、ファインプレーや本塁打といったプレーの質ではない。スローイングの足の運びやキャッチボールでの捕球の仕方など、小さなことでも改善する姿勢を見せた努力を認める。褒められた選手たちは変化に気付いてもらえたうれしさから、もっと指導者に見てもらいたいという前向きな気持ちになっていく。
選手のモチベーションを上げる褒め方や褒める“餌を撒く”タイミングは、指導者の観察力が問われる。天井監督は「選手が本気になった瞬間を見逃さないことが大切です」と力を込める。学年が上がる時やレギュラー争いの時など、選手の動きや表情が変わる瞬間に効果的な言葉をかけられるよう、日頃から選手の変化に注意を払っている。
全国大会出場というチーム目標を掲げ、個々の選手に成長してほしいからこそ、厳しく指導する時もある。天井監督は三振やエラーといった選手の失敗に大きな声を出すことはないが、全力プレーを怠った場合は必ず注意する。自分ができることに手を抜けば成長の機会を失い、他のチームメートにも迷惑をかけてしまうためだ。体も心も成長途中の小学生の指導では、大人の役割や影響は特に大きくなる。
(間淳 / Jun Aida)
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