3連覇直後に“開幕戦”…最強捕手陣に立ち向かう苦悩 秘めた悔しさ、握りしめた航空券

オリックス・福永奨【画像:パーソル パ・リーグTV】
オリックス・福永奨【画像:パーソル パ・リーグTV】

オリックス・福永奨捕手は10月1日が今季初出場で「僕にとってはスタートライン」

 丁寧な言葉を紡ぐと、曇っていた表情は晴れやかになった。オリックスの福永奨捕手は今季3度目の1軍昇格となった10月1日の楽天戦(京セラドーム)で、今季初めてマスクを被った。3連覇を決めた後の試合だったため「みんなはCSや日本シリーズに向けての準備段階だったかもしれませんけど、僕にとってはスタートライン。開幕戦の意気込みでした」と振り返った。

 森、若月、石川、さらに今季は主に一塁を守ったが、頓宮も捕手登録。球界屈指の捕手陣を誇るチームで、福永は長らく鍛錬を積んでいる。2021年ドラフト3位で入団した福永は新人年の昨季、2軍で84試合に出場した。今季も2軍で104試合に出場し、多くの経験を積んだ。だが、24歳には“苦悩”があった。

「1軍の試合を経験している方に『聞く』ことが、すごく大事なんだなと思っています。ファームにいる時は(捕手陣で)僕が1番歳上で、後輩の選手から尋ねられる立場。1軍のチャンスを掴まないと、話を聞くことだってできない。(質問で)当たれるチャンスを自分で掴むしかない」

 数秒間の言葉が沁みた。福永は今季、7月12日〜18日、9月16日〜19日で1軍昇格したが、出場機会がなかった。10月1日に3度目の1軍切符を掴み「9番・捕手」でスタメンマスクを被った。ただ、6回の守備機会で三塁手からの送球を捕球できず、失点に結びつき「普段だったらできているようなプレーができていなかったので、すごく悔しかった。当たり前のプレーができなかった」と反省した。

1軍経験と、宮崎行きの航空券を握りしめる

 悔しさがあふれたが、下を向く時間はなかった。「試合が終わった時点で森さんと若月さんに『どうでしたか?』と聞きにいきました。翌日に齋藤コーチに話を聞きに行くと、中嶋監督が偶然、横を歩かれていたので、アドバイスをいただきました。その後、亮さん(石川)にも聞けました。5人も(話が)聞けたのがすごく収穫なんです。プラスでしかない。今後のことが考えられるようになりました」。失敗しても、貪欲に成功を追い求めた。

 その後は途中出場で2試合に出場し、今季は3試合でマスクを被った。「ここで終わりじゃないですし、あの捕手陣に勝つためにはどうするのが良いのかと考えられるようになりました。あの人たちを越えなければ、僕は1軍にはいけないので」。言葉の力強さが増した。

 ボヤけつつあった視界は少しクリアになった。「ファームでマスクを被らせてもらってますけど、1軍でマスクを被る経験がほとんどなかった。1軍の打者は(映像と)全然違った。打者の特徴もスコアラーさんに聞いて精一杯な部分もありました。森さんや若月さんはいっぱい試合に出ていて、100何分の1かもしれないですけど、僕は毎日が1分の1。そこで結果を残さないと生き残っていけない立場なので」。決意を新たに、宮崎行きの航空券を握りしめた。

 プロ初出場はロッテ・佐々木朗希投手に完全試合を達成された、昨季4月10日。悔しさからスタートしたプロ生活を、持ち前のガッツで喜びに変えてみせる。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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