子どもが練習見学に「来ないで」と言う理由 保護者は子の鑑…成長に大切な“結束”

東海大菅生高中等部・村上晋監督【写真:高橋幸司】
東海大菅生高中等部・村上晋監督【写真:高橋幸司】

今夏の全中初出場…東海大菅生高・中等部は保護者見学ウエルカム

 東京都あきる野市の東海大菅生高校・中等部軟式野球クラブは、今夏、全日本中学校軟式野球大会(全中)に初出場を果たしベスト16に進出した強豪だ。これまで元日本ハム育成の海老原一佳外野手(現高岡向陵高コーチ)や、今月行われるドラフト注目の左腕、細野晴希投手(東洋大)らを輩出。現在、2年生・1年生計15人のチームを率いる村上晋監督は、野球を通じた人間形成を大切にしており、チームスポーツだからこそ、保護者も含めて一丸となることが大切だと語る。

「明日、練習を見に行くよ」「試合を見に行くよ」と親が話しかけた時、子どもはどのような反応を示すだろうか。「うん、いいよ」と素直に応じる子もいれば、「来るなよ」と突っぱねてくる子もいるだろう。「『来るな』と言っているうちはまだ、子どもにとってチーム内での居場所や位置づけができていないということ。それが『来ていいよ』となると、自分で居場所を見つけ出し、素直に話ができているという証拠です」と村上監督は言う。

 保護者の練習や試合の見学は、いつでもウエルカムにしている。その代わり「自分の子だけでなく他の子も、チーム全体を見に来てください」と注文をつける。また、「絶対に自分の子どもにプレッシャーをかけないでください」とも初めに話すという。

「『なんで他の子が試合に出ているんだ』と言っても、それは本人が一番わかっていること。プレッシャーをかければ子どもには悪影響があるし、それこそ『来るなよ』となります。『別にあなたを見に行くわけじゃない。菅生のチームを見に行くんだよ』と、親が素直に言えるのがいいんです」

「投手の親と捕手の親は、一緒になって子どもたちを見てほしい」

 それは、見学時の保護者たちの姿と、チーム状況とが重なる部分があると感じるからだ。「保護者同士がかたまって見ていて、自分の子に限らず、いいプレーにはみんなで拍手を送る。そういう時のチームは強いと感じます」。

 村上監督は高等部の野球部部長として1996年夏、1997年春、2000年夏と3度の甲子園出場を経験しているが、親同士の結束と支えで聖地に行くことができた代もあったと感じている。野球はチームスポーツ。保護者も含めての“ワンチーム”であってこそ、好結果に結びつくということだろう。

「投手の親と捕手の親は、一緒になって子どもたちを見てほしいし、ショートとファーストの親同士もそう。保護者の関係性は子どもたちの関係性にもつながります」

 普段の学校生活で問題があれば、家に連絡し「練習に参加させません」とはっきりと伝えることもあるという。そうした積み重ねで、選手の生活態度も変わり、野球の技術も良い方向に変わっていく。先生と生徒・保護者の関係も難しい時代ととかく言われがちだが、「野球の本質と同じで、根本的な柱となる部分は変わることはないと思います」。監督である前に教育者として、中学生たちの成長を見つめている。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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