“投高打低”が生んだHR王「3人同時受賞」 共通点が多数存在する“イチローの1995年”
3人以上がタイトルを分け合うのは28年ぶり
今季のパ・リーグ本塁打王は、26本を放った楽天・浅村栄斗内野手、ロッテのグレゴリー・ポランコ外野手、ソフトバンク・近藤健介外野手の3選手が受賞した。打撃の主要3部門(打率、本塁打、打点)で、3人以上が同じタイトルを獲得するのは、1995年にイチロー(オリックス)、田中幸雄(日本ハム)、初芝清(ロッテ)が打点王を分け合って以来、28年ぶりの出来事となった。
オリックスがパ・リーグを制した1995年。その中心にいたのがイチローだった。前年の1994年に、登録名を「鈴木一朗」から「イチロー」に変更すると、首位打者やMVPを獲得する大ブレークを果たした。1995年も勢いは止まらず、打率.342、25本塁打、80打点、49盗塁を記録し、2年連続の首位打者、最多安打、MVPに加え、自身初の打点王と盗塁王も獲得した。さらに、本塁打王もトップと3本差で、3冠王に迫るシーズンを送った。
田中はプロ10年目のこの年、全試合に出場してキャリア最高の打率.291に加え、25本塁打、80打点、出塁率.368、OPS.874を記録した。ベストナインとゴールデン・グラブ賞に加え、キャリアで唯一の打撃タイトルとなる打点王にも輝いた。
初芝は、自身初の打率.300超えを達成し、キャリア最多タイの25本塁打を記録。出塁率.358、OPS.903とハイレベルな成績を残し、打点王も獲得した。三塁手部門のベストナインにも輝く充実のシーズンを送った。
3人がタイトル同時受賞となった1995年と2023年の“共通点”とは?
1995年と2023年のリーグチャンピオンはともにオリックス。この2つの年は共通点も多い。リーグ平均打率を見ると、1995年は打率.248で、3割到達はイチローと初芝を含む4人のみ。一方、2023年の同打率は.241、3割打者は頓宮裕真捕手(オリックス)と近藤の2人だけと、いずれも投高打低の傾向が強かった。
本塁打数が少なかった点も同様だ。1995年は小久保裕紀内野手(ダイエー)が28本で本塁打王を獲得。2023年の同タイトルは26本と、異例の“低水準”となった。
1995年のイチローは首位打者と打点王、今季の近藤は本塁打王・打点王と打撃2冠に輝いた。さらに、イチローは本塁打王まで3本差、近藤選手は首位打者まで打率.004差と、3冠王まであと僅かに迫った。
1995年に打点王を獲得した3選手は、以降も息の長い活躍を続けた。今季の熾烈な本塁打王争いを繰り広げた3人も、今後のキャリアでさらなる活躍を見せることができるか。来季の躍動も大いに期待したい。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)