巨人の“高卒指名ゼロ”に見えた意図 阿部新監督の大改革…セ各球団のドラフト戦略
巨人3位の佐々木俊輔外野手は「1、2番タイプもパンチ力あり」
「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が26日に行われた。セ・リーグ各球団の指名の意図を、現役時代にロッテなどで日米通算234セーブを挙げ、現在は社会人のエイジェックの投手コーチを務める小林雅英氏が分析。特に、支配下で5人指名したうち社会人が4人を占めた巨人、3球団競合の末にENEOS・度会隆輝外野手の交渉権を獲得したDeNAの指名戦略が目を引いた。
2年連続Bクラスに終わり、阿部慎之助監督が就任した巨人は、1位で新監督の中大の後輩にあたる西舘勇陽投手を指名した他は、2位以下の4人全員が社会人(投手2人、内野手1人、外野手1人=育成を除く)。小林氏は「チームリーダーの坂本(勇人内野手)も(今年12月で)35歳になりますし、即戦力を加えて早急にチームをつくり変えようという意図を感じます」と指摘する。
小林氏は「社会人野球に身を置くものとして、これほど選手を評価していただいたことはありがたいですし、うれしい」と述懐。「3位の日立製作所・佐々木俊輔外野手は左打ちの1、2番打者タイプですが、パンチ力も秘めています。われわれエイジェックは都市対抗の北関東予選で痛い目にあいましたよ」と太鼓判を押す。
大学生投手を中心に“豊作”といわれる今年のドラフトだが、野手の度会に3球団の1位指名が競合し、DeNAが交渉権を獲得した。「今年は外れ1位や2位でも、ある程度レベルの高い投手を獲れるという計算はあったのではないでしょうか」と小林氏。度会は千葉県出身だが、横浜高、横浜市に本拠地を置くENEOSでプレーしてきた。小林氏は「私は父で元ヤクルト内野手の博文さんをよく知っていますし、度会本人とも面識がありますが、非常に明るい人柄です。横浜のファンから地元に縁の深い選手として熱い声援を受けるでしょうし、本人もそれを前向きにモチベーションに変えていける性格だと思います」と目を細める。
技術的には「コンタクト率が高いですし、長打もある。プロでは、ソフトバンクの柳田(悠岐外野手)のような長距離砲を目指すのか、あるいはソフトバンクの近藤(健介外野手)やレッドソックスの吉田(正尚外野手)のような中距離打者になっていくのか。監督・コーチと相談しながら、どちらへ舵を切っていくのかに注目したいです」と語った。
阪神2位の最速159キロ椎葉剛投手に“大化け”の予感
独走で今季のセ・リーグを制した阪神は、1位で青学大・下村海翔投手の単独指名に成功。2位の四国アイランドリーグplus・徳島の椎葉剛投手も、中央球界ではあまり知られていないが、最速159キロのストレートとスライダーが武器の右腕。小林氏も「非常に球威のある投手と聞いています。プロのストライクゾーンにうまく順応できれば、面白い存在になるかもしれません」と語り、ファンをあっと驚かせる可能性を秘めているようだ。3位、4位では高校生遊撃手を指名。充実した現有戦力に加え、バランスのいい補強になりそうだ。
広島は支配下指名5人のうち、4人が大学生投手。ヤクルトも同5人のうち3人が大学生・社会人の投手。1位指名した度会を抽選で外した中日も、外れ1位で亜大・草加勝投手を指名し、改めて即戦力投手の豊作ぶりを印象づけた。阪神が実に18年ぶりに覇権を握った“激動のセ”の勢力図を、今年のドラフトはどう変えていくのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)