“悪夢の夏”から2か月 1年春から名門の「1」背負う右腕…来春選抜へ近付く無双
広陵2年の高尾響投手は今夏・慶応戦で152球熱投も敗戦
広島の強豪校、広陵のエースナンバーを入学して間もなく手にした高尾響投手。身長172センチと高さはないが、最速147キロの直球を主体に今年の選抜大会4強入りに貢献。夏の選手権は3回戦で慶応に延長10回タイブレーク3-6で敗れたが1人で投げ抜き、敵将・森林貴彦監督に「勝つにはタイブレークに持ち込むしかなかった」と言わしめた。夏の王者を追い詰めた右腕は、敗戦に繋がったピッチングを教訓に、さらに成長を遂げようとしている。
8月16日の慶応との3回戦、高尾は聖地のマウンドに悔いを残した。初回に2四球、2暴投で2点を献上するなど、3回までに3失点。それでも4回以降は立ち直り、9回までスコアボードに0を並べる。しかしタイブレークに突入した延長10回、味方の失策で勝ち越し点を奪われ、さらに2死満塁で5番・延末藍太内野手に甘く入った球を右前に痛打され、2点を失った。炎天下での152球の力投は報われなかった。
ただ、慶応の森林監督は「広陵に勝つにはタイブレークに持ち込むしかなかった。高尾君にランナー無しから攻めてもう1度点を取るのは難しい状況だったので、ウチが勝つには9回を乗り越えるしかなかった」と試合後に本音を明かした。テンポよく投げ込むストレートとキレのある変化球。立ち直った後の高尾の投球は、優勝監督に得点は困難と思わせた。
あれから2か月。広陵は10月27日に開幕した秋季中国大会を勝ち上がっている。高尾は岡山学芸館との1回戦、下関国際との準々決勝ともに先発して勝利に貢献。計15回を投げて15奪三振1失点で、いずれも課題の初回を3者凡退で退けた。
右投手で「西日本ナンバーワン」岡山学芸館の指揮官が絶賛
「慶応戦では初回の入りからぐだぐだして点を取られたので、3人でしっかりと抑えられるように紅白戦をしたり、ボール球を減らすことを意識してきました」。夏から成長した姿を披露し、下関国際戦では9回1死まで二塁さえ踏ませない投球で完封した。
「アウトコースやったらバットに当たりやすいので、インコースへしっかり投げて、インコースを意識させながらスライダーとかも使っています。(今後の目標は)ストレートの常時の球速を上げることと、ここ一番での変化球をしっかりと投げ切れるようにするのと、今もコントロールに課題が残っているのでしっかりと詰めていけたら」
1回戦では7回から初めてレフトの守備に就いた。無死満塁で本塁へ好返球を送り、走者を刺して最少失点で切り抜けた。高尾とは春季中国大会に続く2度目の対戦となった岡山学芸館・佐藤貴博監督は「右投手だったら西日本でナンバーワンでしょう」と語った。
来春の選抜当確まであと1勝(中国地区の出場枠は2)。“悪夢の夏”を経てさらに成長を遂げた右腕は3度目の聖地、そして次こそは頂点を狙う。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)