「腰を回して投げる」はNG? 小学生も知らないと損…理想の動作に導く“体への理解”

「バネ投げ」の指導を受ける選手たち【写真:間淳】
「バネ投げ」の指導を受ける選手たち【写真:間淳】

回転動作に使うのは「胸椎」…子どもたちにも専門用語を使う理由

 エラー動作をなくすには正しい知識が必要になる。ベールボールメディカルセンター(BBMC)は、肩や肘に負担をかけずに小さな力で大きなエネルギーを生み出す「バネ投げ」を指導している。理想的なフォームを身に付けるため、小学生にも体の構造を説明している。

 BBMCでは少年野球からプロ野球まで、幅広い選手に腱を使って投げる「バネ投げ」を指導している。投球では、13か所の腱を効果的に使うと、球速やコントロールの向上が期待できるという。相澤一幸代表は小学生にも体の仕組みや使い方を詳しく説明し、専門的な言葉を使う時もある。その理由を明かす。

「小学生にも、あえて胸郭や骨盤といった言葉を使います。その後に胸骨や骨盤はどの部分なのか、どのように使うと最大限の力を発揮できるのか説明します。子どもであっても、知らないことは損です。知識が増えると選手は自分で気付くようになるので、私たちは質問したりヒントを出したりして選手の発見を手助けしています」

 バネ投げの指導では特定の動きに重点を置くわけではない。体の構造や投げる動作を正しく理解すれば、間違った方向へ進むことはないという。例えば、少年野球でも珍しくない「腰を回して投げなさい」という指導について相澤代表は、次のように指摘する。

「体の構造上、腰の関節はほとんど回りません。実際には腰椎を使うことになりますが、腰椎は前屈や後屈する役割なので回旋機能はほとんどないんです。最も回旋機能があるのは首、その次が胸です。投げる動きで大切な回転運動は、『胸椎を使う』と伝えるだけで選手の意識は大きく変わります。体の仕組みを知っていれば、腰を回すという表現はおかしいと気付き、上体を回す投げ方を覚えられます」

小・中学生で起きるエラー動作は骨盤…パワーポジションの肝

 関節の周りには筋肉がついている。胸椎を使った投げ方をしていれば、自然と胸周りの筋肉が強化される。早い段階から理にかなった投げ方をすることで、練習が筋力トレーニングになるのだ。相澤代表は体に関する正しい知識があればエラー動作は起きないと指摘する。回旋機能がほとんどない腰を回して投げようとする知識不足が、エラー動作を引き起こすという考え方だ。

 正しい知識があっても、成長期の小・中学生ではエラー動作が起きてしまうのは骨盤。まだ体幹を十分に強化できていないことから骨盤が安定しないためだ。持っている力を無駄なく投球や打撃に生かすにはパワーポジションが大切で、その際に骨盤は最も重要な役割を担う。相澤代表は「人間は頭が重いので背骨が曲がってしまいますし、日常生活の動きにはないパワーポジションを覚えるのは難しいです」と話す。そして、こう続ける。

「パワーポジションをつくって下半身を安定させた投げ方を身に付けないと、肩や肘に負担がかかってしまいます。ただ、体の成長を待っていたら、小、中学生の期間が終わってしまうので、自宅で練習する時から骨盤を意識してほしいと思います。保護者が骨盤の役割や使い方を学んでお子さんの動きを確認できると、選手のパフォーマンスアップにつながると思います」

 相澤代表は自宅でもパワーポジションを覚えられるように、座るだけで自然と理想の形を覚えられるアイテム「パワースタンバイ」を開発したほど、骨盤やパワーポジションを重要視している。体の構造を学ぶ時期に早すぎることはない。小・中学生の頃に得た知識が、高校以降の力の差として表れる。

(間淳 / Jun Aida)

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