0-2から外す1球に「何の意味があるのか」 流れ手放した阪神…痛恨だった“選択ミス”
ノイジーが2回に山本からソロを放ち先取点も、その裏に2点を奪われ逆転
■オリックス 5ー1 阪神(4日・京セラドーム)
阪神は4日、京セラドームで行われたオリックスとの「SMBC日本シリーズ2023」第6戦に1-5で敗れ、“逆王手”をかけられた。先取点を奪いながら直後に逆転を許した場面に、日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏は「防げた2点だったかもしれない」と分析した。
先手を取ったのは阪神だった。2回1死走者なしからノイジーがエース・山本の156キロ直球を弾き返し、右翼席へ先制ソロ。第1戦で7得点を奪いKOした右腕から幸先よく1点を奪った。だが、直後の守りで村上が1死二、三塁のピンチを招くと、若月に右前適時打、続く中川には左犠飛を浴びて逆転を許した。
一気に流れがオリックスに傾いた2回の攻防。その後は紅林に2ラン、頓宮にソロを浴びてリードを拡げられた。野口氏は「ホームランによる失点は投げミス。しょうがないとは言えないが、2回の2失点は防ぎようがあったとも言える。焦る必要はない場面だった」と指摘した。
まずは若月に対するバッテリーの攻め。初球は真ん中低めのフォークで空振りを奪ったが、2球目は外角に外すはずの154キロ直球が甘く入り、簡単に一、二塁間を破られて同点に追いつかれた。
「完全にタイミングが合っていない初球の空振り。2球目は外角に様子見の真っすぐをいったが、ストライクゾーンに入れては絶対にダメな場面。この日の村上は直球の制球が不安定。確実にボールゾーンに投げられる球種を選択しなければいけなかった」
第7戦の先発は青柳「ある意味、投げやすい状況」
さらに野口氏が注目したのは、勝ち越し犠飛を浴びた中川圭の打席。初球は低めのフォークで空振り、2球目は内角の際どい直球で見逃し(ストライク)。簡単に追い込むも、3球目は外角に外れる直球で“一呼吸”置くと、続く4球目の直球を左翼へ弾き返された。
「打者としてはボール球を振り、際どいコースをストライクと言われ『しまった』と焦る場面。3球目を大きく外したことで打者は落ち着つくことができ、仕切り直しのタイミングを与えてしまった。あの1球には何の意味があったのか? 平常心を取り戻すまでに勝負したいところ。無駄な1球が1点を呼んでしまったように見えます」
甲子園で劇的な連勝を飾り、敵地でエースから先取点。流れは阪神かと思われたが、すぐさま逆転を喫して山本を立ち直させてしまった。これで3勝3敗の五分となり、勝負は第7戦にもつれる形になった。運命の一戦には、今シリーズ初登板の青柳がマウンドに上がる。
今季は8勝6敗、防御率4.57と不本意な投球が続いた右腕。レギュラーシーズンでも最後の2試合は制球を乱して連敗を喫している。それでも野口氏は「ある意味、投げやすい状況。最後は総力戦になる。良ければいけるところまで、ダメならすぐに交代。ブルペン陣は2日休みをもらっている、伊藤将にも出番はあるかもしれない」と口にする。38年ぶりの日本一か、それとも……。“関西ダービー”は最後の最後まで熱い戦いが見られそうだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)