「やり切った」と言えず…38歳で静岡新球団に挑戦 戦力外→コーチ転身も“現役復帰”

ハヤテ223のトライアウトに参加した元DeNAの藤岡好明【写真:宮脇広久】
ハヤテ223のトライアウトに参加した元DeNAの藤岡好明【写真:宮脇広久】

NPB3球団を渡り歩き、15年間で通算337試合に登板した藤岡好明も参加した

 来季から静岡県を本拠地に、NPB2軍のウエスタン・リーグに新規参入することが内定している「ハヤテ223(ふじさん)」が4日、静岡市の清水庵原球場でトライアウトを行い、前日の1次試験に合格した49人に、1次を免除されたNPB経験者7人を加えた計56人が参加した。なかでも最年長は、かつてソフトバンク、日本ハム、DeNAのNPB3球団で計15年間活躍した38歳右腕の藤岡好明投手だ。

 20代前半が大半を占めた参加選手の中にあって、ひと回り以上年上の藤岡の体のキレは際立っていた。締めくくりとして行われた、実戦形式のシート打撃。各投手が打者4人と対戦し、藤岡は最初の打者を右飛に仕留め、2人目の打者には一塁線を抜く三塁打を浴びたが、3人目を空振り三振。最後の4人目を三ゴロに打ち取り、ホームを踏ませることはなかった。「ピッチング自体は数多くやっていましたが、打者に投げるのは久しぶり。それでもコントロールよく投げられましたし、捕手ともコミュニケーションを取りながらやれました」と手応えありげにうなずいた。

 宮崎日大高、JR九州を経て、2005年の大学生・社会人ドラフト3位でソフトバンク入り。1年目の2006年に62試合に登板したのをはじめ、主に中継ぎとして貴重な役割を担った。2014年から日本ハム、2016年の開幕直後にはDeNAに移籍。2020年限りで戦力外通告を受けて現役引退を表明するまで、15年間で積み上げた通算337試合登板、22勝16敗、1セーブ57ホールド、防御率3.78の実績は、この日の参加者の中でピカイチである。

 引退を表明した翌年の2021年には、1年間DeNAのファーム投手コーチを務めた。ところが昨季、ソフトバンク時代に同僚だった馬原孝浩監督が率いる九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズで投手コーチ兼任で現役復帰。今季を含めた2年間で計12試合に登板したが、馬原監督の退任に伴い今季限りでの退団が決まった。

140試合を戦うノウハウを知る「若い人たちにアドバイスをしていければ」

「ハヤテ223」への入団を希望する選手のほとんどは、NPB球団と対戦し、その関係者の目に数多く触れることによって、国内最高峰リーグの球団への移籍の足がかりにしようと考えている。しかし、藤岡のモチベーションは少し違うようだ。「(現役で)野球を続けることが一番の目的です。日本に限らず海外も視野に入れながら、来季どうやって野球を続けようかと考えていたところ、このトライアウトに行きつきました」と説明する。

 1年間のブランクを経て、現役復帰を決断した経緯については「人間的に成長するために考えた末の結論でしたが、そこらへんは簡単には言えないです」と多くを語らない。だが、「NPBを離れて(火の国サラマンダーズで)若い選手と一緒に練習していても、苦になることはなかった。引退された選手たちが『やり切った』とか『もう練習する気力が出なくなった』と言われるのをよく聞きますが、僕にはなぜかまだ気力がある。練習する気力があるうちは、続けられるのではないかと思っています」と弾けるような笑顔を浮かべるのだ。

 一方、NPBの2軍は来季、約140試合の長丁場を戦うことになるが、高校生、大学生、独立リーグの選手はもちろん、NPB経験者を含めても、今回のトライアウト受験者でこれほどの試合数を戦い抜いた経験を持つ選手はほとんどいない。その点、藤岡は「僕はそれなりに経験してきたので、勝つことも大事ですが、どうやって怪我をせずにパフォーマンスを上げ、結果を出し続けることができるか、若い人たちにアドバイスをしていければと思っています」とうなずく。

「ハヤテ223」はこのトライアウトで選手20人前後を採用し(内定は11月下旬から12月上旬)、外国人選手などを加えた総勢37人前後でNPB2軍参戦の初年度を船出する見通しだ。3月12日生まれで来季の開幕時点では39歳になっている可能性が高い藤岡が、仮に戦列に加われば、有形無形のプラスアルファが期待できそうだ。NPB経験者7人のうち何人が生き残れるのか、注目していきたい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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