2年連続最下位→3連覇「何を変えていくか」 オリを常勝軍団へ…執念采配の“新境地”
オリックス・中嶋聡監督「のど飴を持って、しっかり応援してください!」
泣いても笑っても、最後までぶつかるしかない。オリックスは4日、京セラドームで行われた「SMBC日本シリーズ2023」第6戦で阪神に5-1で勝利し、3勝3敗のタイに戻した。5日の同戦で勝った方が日本一に輝く「関西決戦」。パ・リーグ3連覇を決めたオリックスが2年連続日本一に登り詰め、常勝軍団を証明してみせる。
運命の第7戦を迎える。エースの山本由伸投手が9回138球1失点の完投勝利をあげた直後、中嶋聡監督は勝利監督インタビューでファンに“お願い”をした。「日本シリーズ、2チームしかないので、勝ち負けはついちゃうんですが、良いゲームができている。明日、決戦となりますが、みなさん大きい声で、声を枯らして、のど飴を持って、しっかり応援してください!」。その声は、本拠地に集ったファンの胸に届いた。
試合采配や選手の評価などには、言葉数が少ない監督かもしれないが、ふと話すコメントには力が込められている。リーグ3連覇を決めた9月20日の夜、指揮官は1度だけホッと胸をなで下ろした。「(3連覇を)目標にやってきましたし、それが実現できて良かったです。(2位と15.5差も)ゲーム差は何も思わず、どこも強かった。苦しい戦いばかりでした」。圧倒的な差をつけた“勝者”から、思わぬ言葉が飛んだ瞬間だった。
日々の状態を確認して組むスタメンオーダーは、予想通りとはいかない。固定観念を持たない指揮官は「ここにきて調子が良くなった選手もいる」と、ベスト布陣のラインナップを形成する。リーグ優勝を遂げた際は「絶対に日本シリーズまで行きたい。また考えていきたい」と力を込めた。次なる“野望”は、12球団の頂点しかない。
「何を変えていくか」指揮官が感じた“本音”
超満員に埋まるスタンドには感謝の言葉を届ける。新型コロナウイルスの影響で無観客試合も経験し「何をしても自分たちで盛り上がるしかなかったので……」と、背中を押してくれる声援のありがたみを感じている。
2020年8月に監督代行を引き受け、2021年の監督就任時から3連覇を達成。選手会長の杉本裕太郎外野手、内外野を守れる「超ユーティリティプレーヤー」の中川圭太内野手、遊撃のレギュラーを掴んでいる紅林弘太郎内野手らをノビノビと、時には厳しく育ててきた。
「2年連続の最下位からスタートしたチーム。何を変えていくかと言った時に、我慢してでも中心になる選手を使うと決めていた」
循環を重ねるチームを率いる指揮官。「新しい歴史として、みんなが名前を残していければいい」。慢心はない。突き進む覚悟を、決めている。
(真柴健 / Ken Mashiba)