現役ドラフトから1年…当事者オコエの“本音” 変化した心境「いい終止符を打てる」
オコエは昨年12月の現役ドラフトで加入「新たなチャンスをいただいた」
巨人のオコエ瑠偉外野手がFull-Count編集部のインタビューに応じ、昨年オフに初めて行われた「現役ドラフト」への思いを語った。現役ドラフトは出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化する制度で、日本野球機構とプロ野球選手会の数年に渡る話し合いの末に導入された。全球団、必ず1人は獲得し、1人は放出するルール。当事者となったオコエはどう感じたのだろうか。
2022年12月9日。オコエの携帯電話が鳴った。電話の主は、楽天の球団フロントだった。「現役ドラフトでジャイアンツから指名があった」。突然の連絡となったが、当の本人としては薄々、勘付いていたところがあったという。「ありがとうございます」。球団フロントへ感謝を口にし、電話を切った。
高卒7年目の2022年シーズン。イースタン・リーグでは48試合出場で98打数32安打の打率.327、1本塁打、13打点、7盗塁。バットで結果を出したが、1軍から呼ばれなかった。8月19日にシーズン初昇格したものの、9月1日に2軍再調整に。「2軍の成績はすごく良かったんですけど、なかなか1軍のチャンスがなかった」。1軍6試合出場は明らかな消化不良だった。
2015年ドラフト1位で楽天入り。誰もが認める高い身体能力を持つが、その才能を開花できなかった。今年7月の誕生日で26歳に。同世代の選手は少しずつユニホームを脱ぐ選手が出てきている。
「嬉しかったです。自分は移籍で新たなチャンスをいただいた。ジャイアンツには、いい選手がたくさん揃う。その中で、もし、その競争で負けたとしても、野球人生にいい終止符を打てると思いました。とにかく前向きでした」。12月14日の入団会見では「あとがない」と言って、気持ちを引き締めた。
現役ドラフト12選手のうち半数が戦力外「自分にとっては良かったです」
移籍1年目の2023年。オープン戦で打率.310の好成績を残し、3月31日の中日戦(東京ドーム)では「1番・左翼」で自身4年ぶり開幕スタメンを勝ち取った。41試合出場で打率.235、2本塁打、6打点、1盗塁。レギュラーに定着することはできなかったが、当時1軍監督だった原辰徳氏(現オーナー付特別顧問)からかけられた言葉が忘れられない。
「『お前さん、目が変わったな』と言っていただきました。シーズン中も『どうだ? ジャイアンツは楽しいだろう?』と。『本当に楽しいです』と答えさせてもらいましたが、(2軍で燻っていることなど)色々と知っていた上で、声をかけていただいただろうなと思います」
第1回の現役ドラフトで移籍した12選手のうち半数が、このオフに戦力外を受けた。現役ドラフトは、厳しい現実と隣り合わせでもある。
「何となくプレーするより、移籍することでモチベーションを高く持つことができると思います。自分はジャイアンツに来たことで、あとは自分次第だと思いました。自分にとっては良かったです。ただ、他の選手は分かりません。戦力外通告を受けた選手を見ていると、移籍せずにやっていた方が良かった選手もいるかと思います。結局は人それぞれ。どんな感想を持ったのか、いつか他の現役ドラフトの選手に聞いてみたいです」
オコエにとっては、プロ野球選手として生き返る、プラスの制度となったが、一方で、プロ生活の岐路に立たされる選手もいる。改めて、プロ野球界の厳しさを感じさせる制度と言えそうだ。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)