天に旅立ったエースと「一緒にやりたかった」 元西武戦士が掲げたユニ…捧げる全国V
浦和学院OBが「マスターズ甲子園2023」日本一決定戦の頂点に
今年7月24日、浦和学院のコーチ・三浦貴氏(元巨人、西武)が永遠の眠りについた。高校では同校のエースとして1996年春夏連続甲子園出場の原動力となり、プロでは投手から野手に転向。TBS系列の人気番組「スポーツマンNo.1決定戦」で総合1位に輝くなど、野球の枠を超えた活躍を見せた。しかし、強靭な体を持っててもがんにはかなわず。45歳の若さだった。12日に甲子園球場で行われた「マスターズ甲子園2023」で“全国制覇”を果たした同校OBの石井義人氏(元横浜、西武、巨人)の手には、亡き同級生のユニホームが握られていた。
大会事務局から20回目の大会開催にあたって「全国高校野球OBトーナメント」と東西代表チームによる「日本一決定戦」の実施が発表されると、石井氏は再び三浦氏と一緒に甲子園に立つ“青写真”を描いた。だが、早すぎる別れを迎えた。
石井氏は「(高校で)一緒に甲子園に行けたことも、プロでも同じチーム(西武)でやれたことも、マスターズでまた貴とプレーできたことも、全部いい思い出です」と振り返った。同校OBチームには、三浦氏が同校のコーチに就任した2013年以降の教え子も多数在籍している。それぞれが抱く三浦氏への想いが結束力を強くした。
追悼試合として臨んだ日本一決定戦では、石井氏は途中から「4番・DH」で出場。西日本代表・今治北に9-6で逆転勝利し、全国高校野球OBクラブ連合に加盟している630校の頂点に輝いた。
高校卒業から27年…母校のユニホームでの優勝に「幸せしか言えないっす」
表彰式の間、石井氏はチームメートの手を借りながら三浦氏が使っていたユニホームを着たり、まるでおんぶをするように両袖を肩にまとわせたり、何度もユニホームに目を落とし、微笑んでいた。「予選の時からずっとベンチにありました」。栄冠へ向けて共に戦っていたことを明かした。
「浦和学院のユニホームで日本一になったことがなくて。(同校OBチームに)貴がいて、同期の佐藤(秀樹氏)もいてね。今まで何回もマスターズに参加してきて、優勝できてうれしいですし、幸せです。幸せしか言えないっす」。高校野球を引退してから27年後、母校のユニホームで成し遂げた全国制覇に目を細めた。
だが、一方で寂しさも募る。「やっぱりもう一度ここで、一緒にやりたかったです」と小さくこぼした。「もう少し落ち着いたら、貴のお墓に(優勝を)報告できたらと思います。ホームランを打てなかったのは残念ですけどね。今後また何かあればと、次にとっておきます」。すでに10月から始まっている埼玉大会も、亡き友との日々を思い返しながら、打席に立つつもりだ。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)