滞空時間6.5秒…詰まりながら衝撃弾 「世代No.1を」両親ロシア出身の“逸材2年生”
プロも注目する豊川のモイセエフ・ニキータ外野手が第1打席で右翼へ豪快ソロ
「第54回明治神宮大会」高校の部が19日、神宮球場で行われ、豊川(東海地区代表)は3-15で星稜(北信越地区代表)に敗れた。コールド負けにはなったものの、強烈な爪痕を残したのが、プロも注目するモイセエフ・ニキータ外野手(2年)。豪快な一発を含む2安打1打点の活躍を見せ「世代No.1を目指していきたい」と、来春の選抜に向け更なるレベルアップを誓った。
球場がどよめきに包まれたのは2点を追う、初回の第1打席だった。カウント1-2からの5球目。見逃せばボール球の内角高め直球をフルスイング。打球は高々と舞い上がり、右翼スタンドに飛び込んだ。滞空時間6.5秒の“ムーンアーチ”に本人は「ちょっとバットの芯より詰まり気味。自分のスイングで捉えて、角度が上がったらホームランは出る」と、自画自賛の一発だった。
さらに3回1死走者なしで迎えた第2打席では初球135キロの直球を捉え、火の出るような強烈中前打。5回の第3打席は死球を受け、この日は2安打1打点。今大会は2試合で5打数3安打(1本塁打)3打点と、全国の舞台でも自慢の打撃が通用することを証明した。
両親がロシア出身で、愛知県で育ったニキータ。昨年までは高校通算0本塁打だったが、この日の一発を含め今年だけで14本塁打とアーチを量産。「トップの位置が高く、足を高く上げて股関節を締めて打つ。自分のスイングがある」。肉体強化にも成功し、独自の打撃フォームを確立させたことで成績は向上した。
チームの合言葉は「ニキータに回せ」。本人も打撃には絶対的な自信を持っており「僕自身、プレッシャーを力に変えるタイプ。勝負強いと自信を持って言える。自分からも俺に回してくれ、と。野球をやっているからこそ、この緊張感を味わえると思える」と、大舞台でも力を発揮する。
今大会では全国の強豪と対峙し、自身に足りないものも発見した。17日には準々決勝・関東一と大阪桐蔭の一戦を観戦。大阪桐蔭の4番、ラマル・ギービン・ラタナヤケ内野手(2年)が、弾丸ライナーで放った右翼への一発に「逆方向へのホームランを見て。パワーが違う」と痛感した。
秋の全国大会はベスト4で終わったが、今オフはさらなる肉体強化に挑むつもりだ。「世代No.1を目指している。もっと上を目指して。誰にも負けたくない。飛ばす人、技術が高い人はたくさんいる。もう一段階、体を大きくして全員で上のレベルを目指していきたい」。一冬越えた来春の選抜では大会屈指のスラッガーとして注目を集めることは間違いない。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)