忘れない戦力外…新大阪で鳴った電話「必死でした」 有利な再就職先に、再び交わった運命

トライアウトを視察したオイシックス新潟アルビレックスBC・橋上秀樹監督(左)【写真:宮脇広久】
トライアウトを視察したオイシックス新潟アルビレックスBC・橋上秀樹監督(左)【写真:宮脇広久】

新潟・橋上監督は現役時代に戦力外通告→阪神入団テスト「必死でした」

 来季からNPB2軍のイースタン・リーグに新規参加することが内定しているオイシックス新潟アルビレックスBCが20日、ハードオフエコスタジアム新潟でトライアウトを実施した。今季まで独立リーグのルートインBCリーグで戦った新潟の指揮を執っているのは、NPB球団の選手、コーチとしても豊富な経験を持つ橋上秀樹監督。チームの大きな転機に何を思うのか。

 新潟は来季、BCリーグの約2倍の年間140試合を戦うことになるため、選手の確保が急務となっている。橋上監督はこの日のトライアウトに参加した32人をくまなくチェックした他、15日には千葉・鎌ケ谷スタジアムで行われたNPB12球団合同トライアウトにも足を運び、今季限りで戦力外となった選手数人にオファーをかけている。

「NPBを戦力外になる選手は、残念ながら毎年必ずいます。そういう選手たちの“再起の場所”として、選んでもらえるチームになれればいいなと思います」と橋上監督。来季から2軍とはいえ公式戦を戦う新潟は、NPB球団関係者の目に触れる機会が増え、NPB入りや復帰を狙う選手たちにとっては有利な再就職先と言える。

 橋上監督自身もトライアウトには、特別は思いを抱いている。もともとは1983年ドラフト3位で、安田学園高(東京)からヤクルトに捕手として入団。後に外野に転向し、代打の切り札などとして活躍した。特に名将・野村克也監督の下で重宝された。

 しかし1996年オフに日本ハムへ金銭トレードで移籍し、1999年オフには戦力外通告を受けた。この時、阪神監督に転身していた野村氏から声がかかった。とはいえ無条件の入団ではなく、与田剛氏(前中日監督)、元近鉄の山崎慎太郎氏らとともに10人が兵庫県の鳴尾浜球場に呼ばれ入団テストを受けた。

“教え子”の巨人・阿部慎之助監督へエール「豪快に見えて実は繊細」

「必死でした。シート打撃では5打席で3~4本ヒットを打ったと記憶しています」と橋上監督。終了後、その日のうちに帰京の途につき、新大阪駅に到着した時、“合格”を知らせる電話が鳴った。こうした経験があるから今、NPB復帰に執念を燃やす選手たちの心境は胸に迫る。

 現役引退後の橋上監督は、2005年から楽天のコーチを5年間務め、2011年に新潟監督に就任するも、翌2012年には巨人にコーチとして招かれた。巨人では当時の主砲で安田学園高の後輩にもあたる現監督・阿部慎之助の信頼が厚かった。その後も楽天、西武でコーチを歴任し、2021年から10年ぶりに新潟監督に復帰して現在に至る。

 今も親交がある巨人・阿部監督には、「巨人で初めての捕手出身監督なので、ぜひ成功してほしい」とエールを送る一方、「彼は豪快に見えて、実は繊細な性格。視野が広く、選手1人1人に目配りができるところは、間違いなく監督に向いていると思います。ただ、1人で抱え込もうとせず、コーチに任せるべきところは任せてほしいですね」と語る。こうした思いはすでに、実際に顔を合わせた際に直接伝えたそうだ。

 豊富な経験を得て、来季から意外な形で再びNPBに関わることになった橋上監督。新規参加1年目から存在感を放つはずだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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