選手に「やっとけよ」は絶対NG 虎投手指導のコーチ…目標達成に大切な“寄り添い”
BBMC・相澤一幸代表が推奨する“擬音”「頭の中で文字化すると遅い」
選手への声がけに苦労している指導者は、是非参考にしてほしい。兵庫県西宮市で動作改善に取り組む野球専門プロ施設「ベースボールメディカルセンター(BBMC)」を運営する相澤一幸代表は、小学生からプロ野球選手まで、幅広い世代の選手に対し、13か所の腱を効果的に使って投げる「バネ投げ」を指導している。Full-Countでは少年野球の現場を知る“凄腕コーチ”12人に取材。今回は相澤コーチの選手に対する接し方に迫った。
「強く」「弱く」「ゆっくり」「早く」といった言葉で選手を指導する監督やコーチは多いだろう。ただ、どのくらいの力加減やスピードなのか、わかりにくさがある。相澤コーチは、こういった漠然とした声がけの解決法として「擬音」を使うことを推奨している。
「『強く投げて』って言うより、『グッ! といってバァーン! と投げて』などの擬音を使った方がわかりやすいじゃないですか。『グゥゥ~ッ!』だと力もためやすい。頭の中で『強く』を文字化していると、もうその時点で遅いんですよね。頭で理解しても、体にどう落とし込むかの方が大事なんです」
音や声、動作などを音声化して示すことを「オノマトペ」と呼ぶ。この「オノマトペ」を使用した指導で有名なのが、“ミスタープロ野球”長嶋茂雄さんだ。「スッ」「グゥゥ~ッ」「バッ」「ガ~ン!」など、様々な擬音語を使い、松井秀喜さんらを育てた逸話はあまりにも有名だ。通常の言葉では表現しにくい微妙な感覚やイメージを、端的に、わかりやすく言い表しているので、少年期の指導で用いられることも多い。
「プロ野球選手に『どうやって投げているんですか』と聞くと、擬音で返されることが多いですね。指導をする上でわかりやすいって、選手側からすると、すごく重要なことなんです」
「野球をやっている時間は本当に少ない」…計画性を大切に
目標を持たせ、そこへ導くのも指導者の大きな役割だ。BBMCでは、ホワイトボードなどに「なりたい投手像」などの絵などを描かせ、その理想に近づくための計画が決まったら、スタッフも一緒になってサポートしていく。
「スタッフには、選手と一緒にやるというスタンスでやらせています。『やっとけよ』というのは絶対ダメ。私もキャッチボールなんか普通にやりますよ。やるんやったら一緒にやろうという感覚です」
相澤コーチは、阪神の臨時コーチを務めていた縁もあり、これまで岩貞祐太投手や藤浪晋太郎投手ら、多くのプロ野球選手をサポート。教え子数人もプロへと送り込むなど、その指導法には定評がある。もちろん、大きな成長が期待できるオフシーズンの過ごし方も大切にしている。
「冬場は時間があると思ってやらないこと。野球をやっている時間って本当に少ないので、これと決めたら、計画的にちゃんと貫き通してやることが大切です。そのためには前後の計画が絶対必要。監督さんら指導者と一緒に計画を練ってやった方がいいかなと思います」
限りある少年期。「言葉がけ1つによって変わってきます」と話す相澤コーチの言葉には、重みがある。
相澤コーチは今月27日から5夜連続で行われる「大人のための少年野球塾」にも参加予定。独自の「バネ投げ」「腱トレ」など、選手たちを成長へ導くドリルやトレーニングを実技解説する。
プロ注目の「バネ投げ」を指導…相澤一幸コーチも“参戦決定”!
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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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