球団呼び出しで家族に事前相談「クビかも」 3度目の通告も…西武24歳が誓った再起
西武・伊藤翔はファームで30試合に登板…手術、リハビリ前提とは違った今年のオフ
西武・伊藤翔投手は10月に3度目の“戦力外通告”を受けた。今季はファームで30試合に登板し2勝負けなし、防御率3.76の成績をあげ「4月くらいからゲームで投げ始めて、1年間離脱することなく投げ切れたのがホッとしたというか、良かったです。その中でイニングや試合数を重ねる中で疲れもありましたし、そこはこのオフの課題かなと思っています」と育成契約で迎える2024年を見据えた。
千葉・横芝敬愛高から四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスへ入団。1年目の2017年にリーグ年間MVPに輝き、その年のドラフト3位で西武に指名された。プロの世界では先発、中継ぎを問わずチームのために腕を振った。しかし、13試合に登板した2021年の成績はふるわず、オフに右肘の内側側副靱帯再建手術(通称:トミー・ジョン手術)を受けることを前提に戦力外通告を受け、育成契約を結んだ。
2022年はリハビリに専念。支配下登録経験がある選手が育成選手となった場合の契約期間は1年。同年オフは再び戦力外となり育成契約を結び直した。今季は4月に実戦復帰を果たし30試合に登板したが、支配下契約を勝ち取ることはできなかった。そうして迎えたこのオフ。球団から呼び出された。
手術、リハビリありきだった過去2年と状況は違う。「クビかもしれないという気持ちでいたので、家族にも両親にも相談しました」。覚悟を持って臨んだ話し合いの場で伝えられたのは、3度目の戦力外通告と来季の育成契約だった。「契約してもらえて安心ではないですけど、良かったなと。もっともっと頑張らないといけないと思いました」と気持ちを新たにした。
与座、粟津、齊藤大ら「TJ組」の活躍が支え…「自分も不安なく投げられるんだと」
与座、粟津、齊藤大らトミー・ジョン手術から復活した“先輩”の存在も支えとなっている。与座は1軍でも実績を残し、齊藤大はファームで今季チーム最多の40試合に登板し防御率2.70、粟津も30試合で同1.95と結果を出した。術後のリハビリは苦しかったが「この時期はこうだったよ、とか聞いているうちに大丈夫なんだなと。何気ない会話で安心できて、自分も大丈夫だと思えた。自分もああいう風に不安なく投げられるんだと。それを励みに頑張ってきました」と振り返った。
フェニックス・リーグでも不安なく投げることができ、チームの優勝に貢献。イースタン・リーグも最終的に3位に終わったが、上位と競ったシーズンを送った。「最後の最後まで緊張感のある試合続きましたし、その中で投げられたのは、復帰の年にいい勉強になりました。1軍に行くための準備ができました」と収穫を口にした。
「今は投げることに不安はないです」。模索し続けてきた投球フォームも固まりつつあるという。勝負の2024年。与えられたポジションで全力投球するしかない。2桁の背番号は必ず取り戻す。
(湯浅大 / Dai Yuasa)