100試合以下で栄誉…併用性で減った“正捕手”の存在 GG賞で浮き彫り、変わった球界の常識
選考対象となる条件はチーム試合数の1/2の71試合以上
今年度の「三井ゴールデン・グラブ賞」表彰式が11月30日、都内のホテルで行われた。捕手部門ではセ・リーグは阪神・坂本誠志郎捕手、パ・リーグはオリックス・若月健矢捕手がともに初受賞。2人とも捕手としての今季出場試合数は2桁にとどまった。これも“捕手併用制”が主流になりつつある表れなのだろうか。
同賞の選考対象となる条件は捕手の場合、「チーム試合数の1/2以上に捕手として出場していること」と定められており、今季の場合は「71試合以上」がそれに当たる。
今季、坂本は83試合、若月は92試合でマスクをかぶった。両リーグのゴールデン・グラブ賞捕手がそろって捕手として2桁試合数にとどまるのは異例。昨年、セのヤクルト・中村悠平捕手は80試合だったが、パのソフトバンク・甲斐拓也捕手は130試合でマスクをかぶった。一昨年は甲斐が全143試合、中村も117試合に捕手として出場している。
プロ8年目の坂本は「試合に数多く出ていないと取れない賞で、僕は今までそれだけのポジションにいることがなかった。条件を満たした年に、しかもチームが日本一になった年にいただけたのは、普通にもらうよりもうれしい」と感慨深げ。過去最多の試合出場数は一昨年の60試合(捕手としては59試合)で、受賞資格を得たこと自体が初めてだった。
夏場までは梅野隆太郎捕手の方が出場機会が多かったが、8月13日のヤクルト戦で左手首に死球を受けて骨折。坂本は以後の39試合中35試合で先発マスクをかぶり、俄然存在感を増した。リーグ優勝への貢献度を評価され受賞となったが、来季梅野が復帰すれば、レギュラー確保が第一関門になるかもしれない。
一方、若月は92試合(スタメンは83試合)でマスクをかぶり、57試合(スタメン56試合)の森友哉捕手と分け合った格好。森が抜群の打力を活かしてDHでも46試合、右翼手としても6試合に出場したのに対し、若月はDHでの出場が4試合あるものの、ほぼ捕手一本だった。「目標にしていた賞なので、うれしく思います。最後に(日本シリーズで)負けてしまいましたが、リーグ3連覇できて、個人としても、チームとしても充実していたと思います」と満面に笑みをたたえた。
最優秀バッテリー賞捕手のDeNA山本祐大には資格なし
これまで球界では専ら「常勝チームには必ず名捕手あり。正捕手の定まらないチームが優勝するのは難しい」と言われてきた。しかし最近はむしろ、心身ともに負担の大きい捕手は、併用制にしてフレッシュな状態で起用する方が望ましいのではないかとの声もある。
11月27日に表彰された「プロ野球最優秀バッテリー賞」には、セはオリックスの山本由伸投手と若月、パはDeNAの東克樹投手と山本祐大捕手が選出された。このうち、山本は捕手としての出場が67試合で、戸柱恭孝捕手(57試合)、伊藤光捕手(56試合)と3等分に近く、三井ゴールデン・グラブ賞の選考対象にはなれなかった。他の3人は、ゴールデン・グラブ賞に選ばれている。
今季捕手として100試合以上に出場した選手も、139試合の甲斐を筆頭に、巨人・大城卓三捕手(133試合)、広島・坂倉将吾捕手(113試合)、中村(104試合)、楽天・太田光捕手(103試合)と5人いる。押しも押されもせぬ正捕手か、機能的な併用制か──。来季以降の行方が注目される。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)