NPB選手も続々通う“野球施設” バウアーに大谷翔平…元プロが見た圧倒的な設備
シアトルの野球施設「ドライブライン」をレポート
オリックスと巨人で投手としてプレーし、昨季限りで現役を退いた鈴木優さんは現在、「パ・リーグ インサイト」のスタッフを務め、米国に約2年の予定で留学中だ。今回は、NPB選手も通うシアトルの野球施設「ドライブライン」をレポートしてもらった。
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今回はシアトルにある“世界一有名な野球施設”と言っても過言ではないドライブラインに行ってきた。ドライブラインは2019年のオフシーズンに日本のプロ野球チームが多数の選手を派遣したことで有名になった。今年もソフトバンクは選手10人と、コーチ、アナリストなどを派遣するとのことで、日本球界でも一番ホットな施設といえる。
私自身も渡米する前の現役選手の頃から行ってみたいと思っていたところで、やっと実現できた。シアトルは私が住むロサンゼルス近郊から飛行機で2時間半の距離にある。国内線なので飛行機代は往復で200ドル少し(日本円で3万円程)とそこまで高くない価格で行くことができた。
空港に着きタクシーで20分ほど行くと到着。周りに特に店などもない倉庫が並ぶようなエリアにあった。入ってみるとまず受付があり、その後ろに大きなショップエリアがある。
そこにはドライブラインとスポーツウエアブランドのコラボ商品が置いてあり、他にもドライブラインで使うプライオボールと呼ばれるさまざまな重さのボールや、トレーニングで使うチューブやバット、トレーニングのメソッドが書いてある冊子などが置いてあった。
その中でも冊子は500ドル(日本円で7万5000円程)という高額で驚いた。しかし日本や世界からわざわざここのトレーニングを受けにくる選手がいるほど、当然価値のあることが書いてあるだろうと考えると欲しくなる代物なのだ。
中に入るととても大きな室内トレーニング施設。半分はウエートトレーニングをするためのエリアで、もう半分はボールを使った練習をするためのケージのエリアになっている。ウエートエリアを見ていくと、スクワットなどをするラックが15個くらい置いてあった。
この数は異常なほど多く、通常の日本のジムなどでは2つか3つ程度である。そのほかには背筋力や跳躍力を測るエリアがあり、選手の体について細かく測ってメニューを組めるようになっていた。
そしてその隣にはドライブラインで1番有名なプライオボールを使ったトレーニングをするエリアがあった。選手は硬式のボールを投げる前にこのトレーニングを行い準備をしてから始める。そのためこのエリアには多くの選手が集まっていた。
ケージではバッティングやピッチングなどの数値を計測可能
次にケージのエリアに向かう。ここではもちろんバッティングやピッチングができるようになっているのだが、全てのレーンにピッチングなら投げた球を測れるもの、バッティングなら打球を測れるものが置かれており、全て結果が出た数値を見ながら取り組めるようになっている。
これが最新の施設の良いところで、今まではコーチなどの感覚に頼った指導を行うしかなかったのが、数値という正解に近いものがわかるようになったことにより両者納得し、指導をできるようになった。
ここ数年まではピッチングの指導が特に有名であったが、最近はバッティングのメソッドも確立されてきた。今冬訪れるソフトバンクの生海外野手やリチャード内野手らもここで得たデータをどう咀嚼して帰国するか楽しみなところだ。
バッティングはピッチャーと違い自分発信のものではないため難しいとされてきたが、ここでは打球速度、方向などを数値で見てトレーニングすることで結果を出せている。
またそのトレーニング方法がとても面白かった。5種類ほどの重さやバランスの違うバットを使い、ティーバッティングやマシンの球を打っていく。理論で説明し理解させつつ、特徴があるバットを使って打ってもらうことで、勝手に身体がその動きを覚えるという流れで行っていた。
理論はわかっているけど実際に自分の身体で表現するというのはとても難しいことで、このように勝手にその動きをしないとできないような矯正法は選手にとってわかりやすくありがたいなと思った。
ドライブラインは物販でもすごかった!
このようなメソッドがあって選手も多く通うのだが、もうひとつ大きなドライブラインの特徴は物販に大きく手を伸ばしているところだ。
トレーニングで使われるプライオボール、バットなどを始めたくさんのものを世界各地に売っている。そのためかここの施設の端にある3分の1くらいは物販の倉庫になっていて、とても多くの量を売っていることが分かる。
日本にも大谷翔平投手やトレバー・バウアー投手がドライブラインのトレーニングを取り入れていることもあり、少しずつ広まっているこのドライブラインのメソッドは、近い将来日本にも入って来て主流になる可能性もあるだろう。
ドライブラインの会社も日本への進出を狙っているようなので、このような良いものがどんどん日本にも早く入っていってほしいなと思った。
(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)