自分で“人体実験”「ブチッといったら終わり」 挑戦できる幸福…40代が「一番楽しい」

「DREAM BRIDGE DAY」で支援する子どもたちとオンライン交流をする館山氏、和田、石川、攝津氏(左から)【写真:高橋幸司】
「DREAM BRIDGE DAY」で支援する子どもたちとオンライン交流をする館山氏、和田、石川、攝津氏(左から)【写真:高橋幸司】

ひとり親の球児らを支援…「DREAM BRIDGE」に鷹・和田と燕・石川が賛同

 長く第一線で活躍できる要因には、飽くなき“探究心”がある。12月上旬に横浜市内で開催されたイベント「DREAM BRIDGE DAY 2023」(NPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション)に、ソフトバンク・和田毅投手とヤクルト・石川雅規投手が登場。ヤクルトOBの館山昌平さん、ソフトバンクOBの攝津正さんを交えてピッチング談義に花を咲かせ、40歳を超えても活躍できる要因や、子どもたちに向けた「夢を諦めない」大切さを語った。

「DREAM BRIDGE」とは、ひとり親家庭や児童養護施設、里親家庭で暮らす球児たち(小学4年生から中学3年生対象)に向け、野球用具を寄贈するプロジェクト。金銭的要因などで野球を断念せざるを得ない子どもたちがいる現状を少しでも変えようと、和田は2020年から支援を続けている。「僕自身、それほど裕福な家庭ではなく、野球用具を買ってもらうのも勇気がいった経験があるので」と和田。イベントでは、賛同する石川、館山さん、攝津さんと共に、プロジェクトのサポーターたちと、アクティビティやトークショーで交流を深めた。

 和田は年明けに43歳となるパ・リーグ最年長、石川は44歳となる球界最年長。同じ左腕投手で、甲子園から幾度となく投げ合ってきていることもあり、互いに現役を続けていることに「めちゃめちゃパワーをもらえる」(石川)と共鳴する部分が多いようだ。この日も、和田が自主トレで取り入れようとしている、運動と脳トレを組み合わせた「ライフキネティック」に参加者と共に挑戦。石川も「面白い!」と刺激を受けた様子だった。

 40歳を超えた今、練習面においても「日々、自分を実験台にしている」と両者は言う。トークショーで参加者から、「限界へ挑戦する怖さはないか」と尋ねられると、「怪我をしたら辞める覚悟はできている」と口をそろえる。

 石川は左腕を触りながら「投げて“ブチッ”といったら、終わりでしょうがない、というくらい。逆に今は、挑戦できることに幸せを感じている」と言う。和田もまた「以下同文です(笑)。40歳を超えてからはボーナスステージ。自分を変えることに怖さがなくなったし、いろいろやってみて、ダメなら辞めればいいという気持ち」と語った。

トークショーで笑顔で語り合う和田(左)と石川【写真:高橋幸司】
トークショーで笑顔で語り合う和田(左)と石川【写真:高橋幸司】

早生まれも2人の共通点「間違いなく老化は進んでいない(笑)」

 石川と和田には、「早生まれ」の共通点もある(石川は1月22日、和田は2月21日生まれ)。小・中学生の育成年代を見ると、成長期が早く訪れた同級生たちとの体格差やパワーの差から、早々に野球を諦めてしまう子も多いと考えられる。プロ野球選手の数をみても、2023年にNPBに所属した日本人選手で4~6月生まれは303人だが、石川や和田ら1~3月生まれは154人と約半数しかいない。

 2人とも小学校から野球を始めたが、“ハンデ”を感じたことはなかったのだろうか。

「確かに4~6月生まれよりも体力はなかったけれど、『負けたくない』とか『もっとうまくなってやろう』という気持ちは、早生まれとかは関係なく持っていたと思います」(石川)

「体が小さかったからこそ、大きい人たちにどうすれば勝てるかを考えて野球をやっていました。前は先に年齢が上がっていく同級生がうらやましかったけれど、今は、間違いなく僕たちの方が老化は進んでいない(笑)。一番若いという気持ちでいられますね」(和田)

 館山さんも3月17日が誕生日だが、「小学生の頃は4月、5月生まれの子をうらやましいと感じたこともありましたけど、その反面、負けたくない、自分の色を出していこうという気持ちもありました。体の成長はどのタイミングで来るかわからない。(早生まれは)単に“4分の1”の確率。気にすることはない」と語ってくれた。

 石川も和田も、共通していたのが「今が一番、野球が楽しい」ということ。困難は様々あれども、諦めることなく、長く野球を突き詰めていけば、貴重な経験ができ、素晴らしい仲間に出会え、可能性が大きく広がる。来季、マウンドに立つ2人の姿が、それを雄弁に子どもたちに伝えてくれるはずだ。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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