プロOB監督が語る“伸びる子・伸びない子” 「何見てるの?」…失いたくない“自分”

埼玉西武ライオンズジュニアのメンバーたち【写真:湯浅大】
埼玉西武ライオンズジュニアのメンバーたち【写真:湯浅大】

西武Jr.の星野智樹監督が技術面よりも重視する「人間としての育成」

 26日から開催される「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2023」に出場する「埼玉西武ライオンズジュニア」は、悲願の初優勝を目指して練習に励んでいる。西武で14年間プレーし、主に中継ぎとして通算105ホールドを挙げた星野智樹監督は、2018年大会から指揮を執っている。子どもたちを指導していく上で、技術面よりも大切にしているのは「人間としての育成」だ。

「野球選手である前に1人の人間として頑張ってもらいたいので、本当に基本的な挨拶、返事、道具を磨く、大切にする、自分のものは自分で用意する……そういうことを繰り返し伝えています。そうすれば、野球に対する気持ちは変わるんじゃないかなと思って接しています」

 選手の打撃、投球フォームに手を加えることは極力避ける。「個性重視というのもありますし、そのフォームでセレクションを通過しているわけですから。まずはスタイルを変えさせません」。ただし1、2か月やっても結果が出なかったら、コーチと相談した上で「こうしたらどうだろう」「少し感じ悪いから、こうしてみるのはどうか」などとヒントを投げかける。

「変にいじって良かった部分を消したくないんです。相手は12歳の小学6年生。噛み砕いて伝えないといけない」。言葉選びは慎重に。「12歳はわからないことだらけなんですから」。

埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督【写真:湯浅大】
埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督【写真:湯浅大】

中学、高校に進むほど「指導者の顔色を見てプレーする子になってほしくない」

 将来、いい選手になると感じる子どもには共通点があるという。「聞く耳を持つこと、ですよね」。周囲の声に対し「流したり、自分の中に留めて力にする能力」は必要で「全てに対して『わかりました』と言われたことを聞いていると、“自分”というものがなくなってしまうと考えています」。

「決して自分がいい指導者だとは思っていませんが、子どもたちには『俺はこう思っているけど、どうかな?』と言ってくれるような指導者に出会ってほしいと思います。『こうしなさい』ではなくて」。話を聞いた上での取捨選択が大切だ。「自分の意見、意思、スタイルは持っていてほしい」とうなずいた。

 仮に自分には合わないと感じたアドバイスを受けたとしても、そこで「いや違います」とするのではなく、「わかりました」と返事をした上で「『やってみたけど自分には合いませんでした』という感じにすれば、その後の色々な意見交換もできるし、さらに指導もしてもらえるとい思いますよ」と説いた。

 一方で「監督の顔色をうかがう子は、上を目指すのは難しいと思います」という。「監督の立場から言わせてもらえば『何を見ているの?』となる。所属している自チームでそうなのかな、と思ってしまいます。中学、高校と、これから先の野球になるほど指導者の顔色を見てプレーする子にはなってほしくないんです。そこは気づいてほしいですね」。

 指示待ちではなく、自分で気づき、考え、動く。それができる選手は上達する可能性を大いに秘めているという。星野監督は野球を通じ、人として向き合いながら成長を促している。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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