耳を疑った“2軍降格”「納得いきません」 謎の通告に大混乱…飛び込んだ監督室
元オリックスの宮崎祐樹さんが現役時代にあった“事件”を振り返る
暗黒時代のオリックスを支え、ムードメーカーとしてもファンに愛された宮崎祐樹さん。2019年にユニホームに別れを告げ、現在は保険会社「アクサ生命」の営業マンとして“第2の人生”を歩んでいる。「今では笑い話、いい思い出です」と、苦楽を味わった現役時代には意を決し、首脳陣に立ち向かったことがあるという。
宮崎さんはプロ2年の2012年にNPB史上初となるプロ初安打を「プレーボール・初球先頭打者本塁打」の快挙を記録すると、翌2013年は自己最多53試合に出場した。1軍の舞台で手ごたえを掴み「この年はレギュラーを絶対に奪う」と意気込んだ2014年の春季キャンプで“事件”は起きた。
紅白戦にスタメン出場していた宮崎さんは1死一、二塁の場面で二塁走者として生還を狙っていた。打者・山本和作がフルカウントとなり、次の投球で自動スタート(当時のチーム内ルールでエンドラン)するも、山本はど真ん中の変化球を見逃し。ボールは捕手から三塁へ渡り三振併殺となった。
サインを見逃した山本は「ごめん、見逃してしまった」と謝りを入れ、その後は淡々と試合が終了。だが、試合後に宮崎さんだけがコーチ陣から呼び出され「あの場面で走らなかったよな? 明日から2軍」と告げられた。確実にスタートを切り、三塁ベースにスライディングをしてアウトになっていた宮崎さんは、納得できなかったという。
前年の巨人戦でサインを見逃し、森脇監督から「論ずるに値しない」と酷評されていた
「僕自身も混乱して『ちょっと待ってください。走っていたし、スライディングしてますよ』とコーチの方々に言いました。するとコーチも『確かにそうだな』と監督に確認に行ってくれて。でも、もう一度戻ってきても『やっぱり2軍だ』と認めてもらえず(笑)。あの時は数試合の紅白戦で7割ぐらい打って調子も良かった。そのシーズンにかけていたので……。言わないと後悔する。気づいたら監督室に飛び込んでいました」
当時の森脇浩司監督に「2軍落ちは納得いきません」と思いの丈をぶつけるも、一蹴されて2軍落ちが正式に決まった。真相は闇の中だが“サイン見逃し”は「人生で一度だけ」と断言する。前年の2013年の巨人戦でスクイズのサインを見逃し、森脇監督から「論ずるに値しない」と酷評された。試合中に2軍降格が決まり、その後はナインからも「論ずるに値しない」が流行語になったという。
「今でも金子千尋さん(現日本ハム2軍投手コーチ)からのラインは『論ずるに値しない』から始まりますから(笑)。いい思い出も、悪い思い出もたくさんあります。優勝争いはほとんどできなかったですが、あの時代に野球選手としてプレーできたのは良かったと思います」
引退から4年が経過しチームはリーグ3連覇、日本一を経験する常勝軍団に変貌した。現役時代を共にしたT-岡田、安達、平野佳、比嘉らの活躍は今も活力になっている。「少しでも長くユニホーム姿をみたい。今は一ファンとしてオリックスをずっと応援していきたいですね」と、エールを送っていた。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)