和田毅が驚き「あれだけの投手が俺に質問くる?」 見据える40代…山本由伸の悩み

ソフトバンク・和田毅(左)とドジャース・山本由伸【写真:藤浦一都、Getty Images】
ソフトバンク・和田毅(左)とドジャース・山本由伸【写真:藤浦一都、Getty Images】

今年の球宴で山本由伸が和田毅に「質問いいですか?」

 ポスティングシステムを利用してオリックスから米大リーグに挑戦する山本由伸投手は27日(日本時間28日)、ドジャースタジアムで入団会見に臨んだ。3年連続で投手4冠に輝くなど、日本で投手としての頂点を極めた男だが「あんな悩みがあるとは思わなかったです」と、驚きの過去を語っていたのがソフトバンクの和田毅投手だ。

 舞台は7月19日、バンテリンドームナゴヤで行われたオールスターゲーム。試合中、ベンチで座る和田に山本の方から声をかけてきた。「質問いいですか?」。日米通算163勝を挙げ、来年2月には43歳を迎える左腕に、25歳の山本から質問してきたのは、はるか先の未来を見つめているからだった。「僕、本当にこのままトレーニングとか何もしなくても大丈夫でしょうか?」――。

 山本と言えばウエートトレーニングを行わないことでも知られ、和田いわく「ランニングもほとんどしなくて、ダッシュくらいだそうで」という。練習中に矢のような器具を槍投げのように投げる姿を、多くのファンも見てきたはず。独自のトレーニングを極めて、日本球界で投手の頂点に立った。質問された和田も「悩みなんてないというか、何を変える必要があるっていう(笑)。『あれだけの投手が俺に質問くる?』って思いました」と笑って振り返る。

ソフトバンク・和田毅【写真:山口比佐夫】
ソフトバンク・和田毅【写真:山口比佐夫】

和田からの返事は「山本くんのやり方で僕は40歳までやってほしい」

 40代に突入しても第一線で戦い続ける和田。現状に一切満足しない山本の姿勢には「考えている子なんだなって思いました。何も考えず、今がいいからいいやっていう子じゃなくて、しっかりと将来とか先のことを考えて野球に取り組んでいるんだというのは感じました。頼もしいなって思って」と感服する。オリックスは3年連続でリーグ優勝と、ソフトバンクにとっても苦しめられた相手。「それだけの投手が考えるんだから、そらすごいわ」と両手を挙げて語った。

「我が道を行って絶対に成功してやるっていう子なのかなって思っていました」という山本への印象は、一瞬にして変わった。気になる和田からの返事は「『逆に山本くんのやり方で僕は40歳までやってほしい』と伝えました」と明かす。トレーニングも、科学的なアプローチもどんどん発達し、知識のない選手が置いていかれる時代。トレーニングをしないスタイルについて背中を押したのは、山本にしか歩めない道を歩んでほしいからだ。

「自分で考えながら僕は40歳までやってほしいです。(ウエートを)やらなくて40歳までやれたら最高ですけど、やったとしてもそれは今後の野球界にとってもすごくプラスになる。やっぱり山本投手のあの方法でもこれくらいの年齢からは走った方がいいんだな、とか。もしかしたらもう少しでも早く走っておけばよかったと、一言でも言えばこれはすごいです。僕なんかが言うよりも一番の説得力になるので」

自分自身にもあったトレーニングの変化「特にメジャーに行ってからはウエートを」

 ただ頑固に自分の意思を貫く必要はない。いつまでも自分が第一線で戦うためにも、時には柔軟な考えであるべきだと和田は言う。現役生活が終わってユニホームを脱いだ時、山本が積んだ経験の全てが野球界にとっての道標になるからだ。「千賀(滉大投手)とかダル(ダルビッシュ有投手)みたいにトレーニングをメインにやって、長くやれればそれはそれで1つの成功。そういう考え方でも40歳までできるっていうのも1つの成功例ですし」とうなずく。どんな足跡を残そうと、山本の全てに価値がある。

 和田自身にも当然、考え方の変化があった。若かりし頃は「走っておけばなんとかなると思っていたけど、今はそれじゃあね」と表現したこともある。年齢を重ねることで「特にメジャーに行ってからは本当にウエートするようになった。40歳になってからは持ち上げる重さも上がっているし、上げているので。周りは、僕はランニングしかしていないと思っているかもしれないですけど(笑)」と筋力にも重点を置くようになった。山本に送った言葉もまた、和田だから送れる言葉だった。

 成功する選手に共通するものは、能力はもちろん、姿勢や知識など目には見えない部分も大切になる。「好奇心だったりね、うまくなりたいっていう意欲だったり、それはすごくプロ野球選手にとって大事だと思いますね。現状に満足しない気持ちとか、それは絶対に必要です」とキッパリ言い切る。形は違えど、誰よりも真っ直ぐに野球と向き合う、和田毅と山本由伸。2人の会話からは、野球への愛だけが伝わってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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