移籍1年で戦力外「多いチャンスはない」 理解した立場…出場1試合も感謝する出会い
オリックス・渡邉は移籍後1試合の出場で構想外に
厳しいプロの世界を肌で感じた。オリックスから戦力外通告を受け、現役引退を決意した渡邉大樹外野手は、2022年に行われた第1回目の現役ドラフトでヤクルトから移籍。2023年は7月22日の日本ハム戦(ほっともっと神戸)に途中出場したのみで、今オフに「構想外」を通達された。
初めて経験する現役ドラフトでの移籍に「環境に馴染むのに、まずは必死でしたね」と振り返る。「もちろん、僕の実力不足が大前提にあるんですけど、そこまで多いチャンスはなかったのかなと。年齢も若いチームで、強いチーム。1回も1軍に上がれずに終わる可能性もあった中で、1回呼んでもらった試合で結果を残せなかったのが全てかなと思います」。懸命に居場所を掴もうとしたが、結果は出なかった。
7月22日の日本ハム戦で1軍初昇格を果たすと、4回の守りから中川に代わってライトで出場した。「(ヤクルトでは)代走、守備固めが多かったので、新しいチャンスを掴みたいなと思っていきました」。その裏の打席では、1点を追う2死二、三塁で打席に向かうが空振り三振に倒れた。
第2打席でも二飛に倒れると、その後は出番がなく試合終了。若月のサヨナラ弾で勝利して喜びを分かち合ったが、26日に2軍降格となった。
T-岡田の優しさと田口麗斗からの“愛情”
再び、大阪・舞洲に戻ると“先輩”が優しく接してくれた。新天地で行動をともにすることが多かったのはT-岡田外野手だった。繋いでくれたのは近鉄、オリックス、ヤクルトで活躍した坂口智隆氏だった。「『Tに言っとくわ!』という感じでした。そこからは一緒に練習する時間が多くて、仲良くさせて頂きました」。引退を決断をした直後、一通のLINEが届いた。
「野球教室やることになったんだけど、予定どう?」
すぐに返信した。「1年しか一緒にプレーすることはなかったですけど、本当によくしてもらいました。(趣味の)キャンプも一緒に行かせてもらって。キャンプはTさんに誘ってもらって、始めました」。野球教室の当日には打席に立ち、ホームランをかっ飛ばした。「快感というよりは、みんなが見てくれていたので、これは打たないとやばいぞと思っていました(笑)」。清々しい1日だった。
思い出すのはプロ初アーチを描いた2019年5月10日の巨人戦だった。プロ初安打が本塁打となり、全速力でホームまで駆け抜けた。「田口さんのスライダーだったんですけど、あの人のスライダー、めっちゃ曲がるんです。頑張って当てようと思って振ったら、飛んでいったという感じです(笑)。入るとは思っていなかったので、全力疾走してました」。当時、巨人に在籍していた田口麗斗投手から左翼席に運んだのだった。
「田口さんと相性が良い記憶がありました。オープン戦でもホームランを打っていたんです。その後、(ヤクルトに)移籍されてきて『俺からしかホームラン打ってないらしいな!』とイジってもらいました(笑)。オリックスに移籍する時もSNSで『また俺から打てよ!』と書いてくださってました」
人に恵まれたプロ野球人生だった。
(真柴健 / Ken Mashiba)