初対戦はまさかの乱打戦…千賀との“究極の投手戦” 山本由伸、7年間で残した伝説

オリックス時代の山本由伸【写真:荒川祐史】
オリックス時代の山本由伸【写真:荒川祐史】

ドジャース移籍が決まり、オリックス時代の投球を振り返った

 オリックスからポスティングシステムを利用してメジャーリーグへの挑戦を表明していた山本由伸投手は、移籍先が日米で注目されるなか、昨年12月にドジャース移籍が決まり、入団会見も行われた。日本を代表する投手であることは言うまでもない。2016年ドラフト4位でオリックスに入団し、プロ7年で通算70勝29敗、防御率1.82。2度のノーヒットノーランに、3年連続パ・リーグMVP&投手4冠……文字だけでも圧倒される。

 そんな日本が誇るエースが2024年からメジャーリーグへ戦いの場を移すにあたり、これまでのパ・リーグでの登板から、あらためて見たくなる試合を3つ選出。なお、今回あえてノーヒットノーラン達成試合やポストシーズンでの登板は選外としている。

 山本といったら、奪三振。そこでまず、2021年6月11日の広島戦を挙げたい。初回、先頭・羽月隆太郎内野手を3球三振に仕留めると、2回には4番・鈴木誠也外野手(現カブス)から6者連続三振を記録。その後も三振の山を築き、7回を終えたところで相手のスタメン選手全員から三振を記録する。しかも、安打はおろか出塁すらさせない。

 ところが8回、山本は先頭の鈴木に初安打を許し、完全投球が途切れると、連打で無死一、二塁に。すると、このピンチでエースのギアが上がった。會澤翼捕手、小園海斗内野手をストライク先行で追い込み、フォークで空を切らせる。そして代打・菊池涼介内野手からこの日15個目の三振を奪い、広島打線をねじ伏せた。8回を投げて113球、被安打2、無四球無失点でチームを勝利に導いた。1試合で奪った三振「15」はポストシーズンを含めて自身最多となっている。

「関西ダービー」となった2023年の日本シリーズ。第1戦に先発した山本が、2勝2敗で迎えた第5戦にベンチ入りしたが、このとき「中継ぎ・山本由伸は懐かしいな」と感じた人もいるのでは。3年連続で沢村賞に選出されたように「先発完投型」「本格派投手」である山本。しかし、プロ2年目の2018年はセットアッパーを任されており、54試合32ホールド1セーブ、防御率2.89の成績を残している。

 ここではリリーフ時代の2018年から、プロ7年で唯一のセーブを挙げた5月1日の西武戦をピックアップする。4-2で迎えた9回。本来であれば、当時抑えを務めていた増井浩俊投手の出番だが、増井が3日連続で登板していたため、ここまで好救援を続けていた山本に託された。19歳の“守護神代理”は、強力打線の中軸を2奪三振含む3者凡退でぴしゃり。肝が据わった姿は今にも通じていた。

4度あった千賀との投げ合い…初対戦はまさかの乱打戦に

 最後に紹介するのは「パ・リーグ究極の投手戦」とも言われた、山本とソフトバンク・千賀滉大投手(現メッツ)の投げ合いだ。両者の対戦は2020年の4試合のみ。初対決となった8月11日は山本が2被弾、千賀も満塁弾を打たれるまさかの打撃戦。2度目の対戦は、7回2安打9奪三振無失点の千賀に軍配。翌週は山本が7回2安打無失点とやり返し、3度目にして初めて投げ勝った。

 そして現時点で国内ラスト対決となっている2020年9月22日。初回は両者、無失点の立ち上がりだったが、2回にオリックスの4番・吉田正尚外野手(現レッドソックス)が千賀から先制ソロを放つ。

 早々と均衡が破れたが、試合は息詰まる展開に。山本は3回、1死一、三塁の場面を併殺で切り抜けると、5回からは3イニング連続で3者凡退。7回118球を投げ、3安打7奪三振無失点の力投を見せる。一方、千賀も追加点は許さず。山本より1イニング長く投げ、8回121球、5安打9奪三振1失点と意地を見せた。

 試合はオリックスが完封リレーで1点を守りきる結果に。エースによる投手戦を制した山本が勝ち星を挙げた。

 ドジャースに入団した2024年は、野球日本代表「侍ジャパン」でともにWBC世界一を経験した大谷翔平投手とチームメートになってワールドシリーズ制覇を目指す。「ドジャース・山本由伸」と世界の強打者たちとの真っ向勝負が今から楽しみだ。

(「パ・リーグ インサイト」菊地綾子)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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