「親子がチームを選ぶ時代」強豪学童の“法人化” 手続き煩雑も…代えがたい利点

埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」【写真:チーム提供】
埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」【写真:チーム提供】

NPO法人設立で補助金を活用した活動を行う埼玉・吉川ウイングス

 野球でも、野球以外の活動でも多くの経験をしてほしい。全国大会出場経験もある埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」は、3年前にNPO法人を設立した。行政や地域との連携が深まり、主催大会やイベントの開催など他のチームにはない機会を数多くつくり出している。

 1977年に創立した吉川ウイングスは2020年、NPO法人を設立した。行政と連携してチームの活動の幅を広げたいと長年考えていたものの、手続きの煩雑さなどがハードルとなっていた。行動に移すきっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染拡大だった。参加予定だった大会は中止となり、練習も自粛期間が続いた。チーム指導者に時間的な余裕ができたことで、NPO法人への手続きを進めた。

 NPO法人のメリットは多岐にわたるという。行政の補助金を活用し、元プロ野球選手を招いた野球教室や、専門家による肩肘の故障予防の講演会などを開催している。

 また、少年サッカー、ソフトボール、グラウンドゴルフなど、地域にある他競技の団体と交流を深める、キックベースや炊き出しのイベントも実施。岡崎真二監督は「選手たちに、より多くの経験を積む機会をつくりたいと考えています。野球を通じた活動が基本ですが、競技や世代を越えて交流を深めています」と話す。行政や地域との連携が深まり、野球道具を後輩へ引き継ぐバザーや、グラウンドに隣接する公園の清掃といった、NPO法人の前から取り組んでいたSDGsの活動も加速しているという。

園児や低学年の選手も多く、市外からの入団の問い合わせも増えている【写真:間淳】
園児や低学年の選手も多く、市外からの入団の問い合わせも増えている【写真:間淳】

学年ごとに大会開催…全国の強豪招聘で「選手の成長や自信につながる」

 法人化を記念して主催大会も始めた。従来からの主催大会を含めて、4、5、6年生それぞれの学年で大会を開き、全国大会で優勝経験のある強豪チームも県外から招いている。岡崎監督は「チームのレベルアップだけではなく、全国レベルのチームと交流することで選手たちが全国を身近に感じられるようにしています。自分たちの力を試して課題を実感できる場をつくり出すことで、選手の成長や自信につながると思っています」と狙いを語った。

 NPO法人にした影響なのか、2021年に高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会に出場した効果なのか、ここ数年は吉川市外からの入団の問い合わせが増えているという。「今は情報化社会で親子がチームを選ぶ時代です。“選ばれるチーム”にならないといけないと思って活動しています」と岡崎監督。

 習い事の選択肢が増える中、競技のパフォーマンスアップ以外の要素も子どもや保護者を惹きつけている。

(間淳 / Jun Aida)

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