イチロー氏「日本球界の野球を見に行けてない」 DeNAドラ1が“刺激”を受けた言葉

マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏【写真:荒川祐史】
マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏【写真:荒川祐史】

手渡しされた自筆の年賀状を持参し青星寮に入寮

 DeNAのドラフト1位ルーキー・度会隆輝外野手(ENEOS)が7日、神奈川県横須賀市の青星寮に入寮した。21歳の新人は、日米通算4367安打を誇るイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)から手渡しされた自筆の年賀状を持参。50歳の“レジェンド”との交流の一端を明かした。

 横浜高3年時にもプロ志望届を提出しながら指名漏れの苦汁をなめた度会は、社会人野球の名門ENEOSで、1年目の冬から何度か、指導に訪れるイチロー氏と顔を合わせていた。同じ右投げ左打ちの外野手の“究極形”としてイチロー氏を深く尊敬する度会は、DeNAとの契約を締結した後、意を決し「連絡先を交換させてください」と直談判。「『いや、ダメだよ』と言われるだろうと思っていて、“ダメ元”でしたが、『おー、交換しよう』と言ってもらえました!」と顔をくしゃくしゃにする。

 さらに「今度食事に行きたいです」とメッセージを送信。こちらも「ぜひ、予定が合えば」との返答を得て、会食が実現したという。度会は報道陣を前に「(会食の)日時とか、何を食べたかとかを、僕が勝手に明かすことはできません。場所なんて、もっての他です」と苦笑。一方で、「1つだけ挙げろと言われても、どれを選んだらいいのかわからないくらい、めちゃくちゃたくさんのアドバイスをいただきました。私生活を含めて『ここをこう直したら、もっといい選手になれるよ』というようなことをお話しいただきました」と、超一流の考えに触れた喜びがあふれ出した。

 イチロー氏は度会と会うたびに、「パワフルだね」と感嘆し、「その明るさを保ちながら、一流選手になれるように頑張りなさい」と言葉をかけることもあるという。

 自身は非常にストイックなイメージのイチロー氏だが、人それぞれの個性を尊重し、十把ひとからげにはしない。将来的な目標として堂々と「打率4割」「トリプルスリー」を掲げる度会の天真爛漫な明るさ、前向きなところを、イチロー氏は美点と見ているのだろう。

青星寮に入寮したDeNA・度会隆輝【写真:宮脇広久】
青星寮に入寮したDeNA・度会隆輝【写真:宮脇広久】

チームを“優勝させる選手”と“優勝させると言える選手”の違い

 度会は身振り手振りを交えながら、「イチローさんはボール拾いをする時ですら、軸足にこう体重を乗せながら拾います。理由をうかがうと、『何事も野球に生かすことのできる準備、トレーニングだと思っている』とのことでした」と説明する。「僕も意識するようにしているのですが、時々忘れて、普通に拾ってしまいます。今も継続されているイチローさんは本当にすごいと、改めて思います」と頭をかいた。

 イチロー氏が現役時代に取り組んでいた「初動負荷理論」に基づくトレーニングにも興味津々で、「僕は体が硬いのですが、イチローさんにいただいたアドバイスを生かして、(関節の)可動域や筋肉の柔軟性を徐々に向上させていきたいと思います」と目を輝かせている。

 また、イチロー氏からもらった言葉をスマホのメモに書き留めている度会は、それを画面に広げながら、「僕はこれまでずっと『チームを優勝させる選手になりたい』と言ってきましたが、イチローさんに話したところ、『優勝させると言える選手になりたいです、にした方がいいのではないか』とアドバイスされました」とも明かす。

“優勝させる選手”と“優勝させると言える選手”の違いとは何か。個人の力でチームを優勝させることの難しさを指摘し、軽々に口にすることをたしなめたのだろうか……。度会は100%理解できたとは言えないが、「ものすごく深い言葉ですよね。しっかり理解して、そういう選手になれるように頑張りたいです」とうなずいた。

 イチロー氏から「僕はここ最近、日本球界の野球を全く見に行けていないけれど、度会くんがDeNAで頑張って試合に出ていたら観に行くよ」と激励されたという度会。これほどボルテージの上がる刺激剤は他にないだろう。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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