NPBを5年で引退も…元燕ドラ1の“次の夢” 「負けません」球団経営に生かす苦い経験
2007年ドラフト1位でヤクルト入団、2012年限りで引退した加藤幹典氏
2007年の大学生・社会人ドラフト1巡目でヤクルトに入団し、2012年限りで現役を引退した加藤幹典氏は今、山梨県民球団の立ち上げに奔走している。2025年のルートインBCリーグ加入を目指し、現在はトライアウトも実施中。38歳になった“元ドラ1”は、新たな夢に向かっている。
約6年前、選手を育て上げたいという思いから、球団をつくりたいとルートインBCリーグの村山哲二代表に相談したことが始まりだった。関東近辺でまだ独立リーグの球団がない地域ということから、山梨県に照準を絞った。しかし山梨県には過去2度、設立にチャレンジして失敗していた経緯があった。それらの問題に向き合い、2023年の1月に本格的なプロジェクトが始まった。
全て、一からの挑戦。最初はたった2人でのスタートだった。「色々な人に聞きながら1つずつつくっていますが、少人数でやる作業としては相当重いというのはかなり実感しています」と苦労も多い。それでも資料作成などの細かい作業も全てこなしながら進んでいる。
現在は準加盟申請が承認されており、2024年に加盟申請の審査に通れば2025年からルートインBCリーグに参戦できる。今年は加入に向けてのテスト期間となるため「ちゃんと運営できるのか、グラウンドの確保ができるのか、そういったところをクリアしていきたいと思っています」と加藤氏は話す。
トライアウトには“エンタメ枠”も「大事なのは本気で打ち込めるか」
1月には育成選手のトライアウトを実施する。そこには山梨県民球団ならではの“エンタメ枠”も設ける。「1つは選手を目指しつつ、芸人さんでもそうなんですけど両方やっていきたい人。もう1つは純粋に自分のエンターテインメントで盛り上げる人。どちらでもいいと思っていて、大事なのは本気でそこに打ち込めるかどうかだけ。熱量の部分は大事にしたいです」。今後は県や市と協力していくことも増えるため、“盛り上げ”も重要視している。
独立リーグといえども、手厚いサポートを約束する。現役NPB選手を見ているトレーナーを自前で用意。自身がヤクルトでの現役時代に故障に泣いただけに「トレーニングとケア、その2つが大事というのは自分の経験から実感しています。体のケアに関しては、独立リーグ、NPBを含めて一番いい環境をつくれていると思っています。そこの部分はまず負けません」と胸を張った。
2024年のテーマは育成。その上で「2025年の加盟、選手を強くすることを目指しています。選手が強いとおもしろい。まずは2025年秋にNPBに1人か2人、輩出することを目指して育成していきたいです」。野球界への恩返しへ、加藤氏の挑戦は続いている。
(町田利衣 / Rie Machida)