2度の指名漏れに涙 アルバイトで賄った食事と入浴…「ラスト1年」で掴んだNPB
DeNAドラフト6位・井上絢登はフルスイングから放たれる豪快な打球が魅力
DeNAのドラフト6位・井上絢登内野手が、早くも非凡な才能を発揮している。新人合同自主トレで豪快な打球を連発。“ラストチャンス”で掴んだNPBの舞台で「順調に進んでいると思います」と充実感を漂わせている。
福岡大時代、プロ志望届を出すも指名漏れ。ともにドラフト会議を見守った同期の仲田慶介外野手は育成ドラフト14巡目でソフトバンクに指名されたが、自分の名前は最後まで呼ばれなかった。“最短”で夢をかなえるため、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに進んだ。
持ち前のパワーを武器に、いきなり本塁打&打点の2冠王。柳田悠岐外野手(ソフトバンク)を彷彿させるフルスイングで“徳島のギータ”の異名をとった。しかし、またしてもドラフト会議で名前が呼ばれることはなかった。茶野篤政がオリックス、日隈モンテルが西武からいずれも育成指名を受けたのを見ていることしかできず「同じ外野手2人が(NPBに)行ったので、本当に悔しかったです。ちょっと1人で泣いた……かもしれないです」。
それでもその夜にはトレーニングを開始した。「独立リーグで野球をやるのは2年と決めていたので。野球をやるのはもしかしたらラスト1年かもしれないと思ったら時間がなくて、いち早く追いつかないといけないと思って切り替えました」とラストイヤーに懸けた。
宮崎は6位、佐野は9位からタイトル獲得…DeNAお得意の“下位から覚醒”へ
徳島での2年目も本塁打王と打点王に輝いたが、打撃の中身は全く違った。DeNAの八馬幹典アマスカウトグループリーダーは「元々振れる選手だったけど粗さがあってボール球を振っていた。2年目は確率が上がって、間違いなく成長しています。独立リーグで頑張ったことが自信につながっていると思うし、努力して頑張った結果が支配下指名になった」と目を細めた。
「(昨秋のドラフトに)かかっていなかったら野球は辞めていました。独立リーグは生活も厳しいし、自分の中で24歳の年でプロに行けないと意味ないなというのがあったので」と井上は明かす。収入は多くなく、1人暮らしで自炊や身の回りのこともこなした。「お給料がよく、まかない食べ放題、温泉に入って帰れるのでやらせていただいていました」というホテルのバイキング会場でのアルバイトに勤しみながら野球に取り組み、最後のチャンスを支配下という形で掴んだ。
八馬スカウトも「対応力はこれからな部分もありますが、パワーは凄い。将来はクリーンアップを任されるような存在になってくれれば」と大きな期待を寄せる。
DeNAでは、宮崎敏郎内野手が2012年ドラフト6位、佐野恵太外野手が2016年ドラフト9位と下位指名からタイトル獲得者を生み出している。挫折を経験して這い上がった男が、新たな“下位覚醒枠”に名乗り出る。
(町田利衣 / Rie Machida)